あと二日間で出来ること

人生の二日間でいったいなにが出来るのだろうか？

 

 

『なんでもできるし、何もできない』

 

 

それが私の答えだ。

 

 

 

介護の仕事につき早いものでもう６年が過ぎようとしている…

６年前、私はどこから見ても新人で、何一つ先輩方に逆らうことも出来ずに

理不尽なことにも息を潜め、叱られることの怯えていた

 

 

今でも覚えている…光が入りにくい間取りの４人部屋の片隅のベッドから

 

『だれか～だれか～お願いします～』と声が廊下に響いていた

 

部屋に入ろうとした私の姿を見つけ

長く続く施設の廊下の端から、ベテラン介護士さんが私に大きな声を上げた

 

『食堂に行く時間でしょ？何してるの！？早く！！』

 

 

私がお年寄りに呼び止められるたびに足を止めてお願いを聞いていることを

その人には、よく叱られていたから、その先輩の声のトーンだけで私の心臓はバクバクしていた…

 

 

オレンジ色の夕日が窓越しに差し込んで、カーテンが大きく揺れていた…

廊下からお年寄りの顔が見えないくらい部屋の中は暗くなり始めていた…

 

廊下の反対側から、オムツ交換している別の先輩の姿が見えた…

 

 

あの先輩なら声を、きっとかけてくれる…

 

 

『○○さんごめんね、ちょっと待っててね！』

 

 

私は、食堂用のピンクの格子柄のエプロンを手に掴むと

そのまま大きな声で私を呼ぶ先輩のところへ走っていった…

 

 

次の日、そのお年寄りが深夜に状態が急変したことを知った。

勤務の時間帯か丁度重なり、私が彼女の乗る救急車へ同乗することのなった。

 

彼女があの時呼んでいた『だれか』は、私だったかもしれないのに

 

私は、その『だれか』になることを自分から拒んだんだ…

 

 

胸が張り裂けるような気持ちで病院の待合室のソファーで過ごしたことが、今でも忘れられない

 

 

 

たった２日しかなくても

たった１日しかなくても

たった一瞬の出来事だとしても

 

 

精一杯生きたい

精一杯できることをしたい

 

 

 

出逢い、分かれてきた方達の命から

私が受け取ったメッセージだと、私は感じている…

 

 

 

だから、あと２日しか残されていなくても

あと、２日も残されていると信じて

 

 

私は、『今』を精一杯生きたい

 

 

Happy　Spot　Club

代表　高山さや佳