
支援総額
目標金額 5,000,000円
- 支援者
- 1,696人
- 募集終了日
- 2022年2月8日
代表齊藤より「絶滅の危機に瀕した猛禽類と共に生きるために」

職業について尋ねられ、「野生動物専門の獣医師です」と答えると、決まってみんな不思議そうな顔をします。野生動物医になって今年で28年。毎日、野の者達の命と向かい合ってきました。ご承知の通り、獣医師が一般に診療の対象とするのは犬や猫などの伴侶動物、牛や馬などの産業動物、変わったところでも動物園や水族館の飼育展示動物です。一般市民から持ち込まれた傷ついた野鳥などをボランティアとして診る獣医師は少なくないと思いますが、野生動物しかも絶滅の危機に瀕した猛禽類を主な診療対象としている獣医師は世界的にもごく僅かです。
食物連鎖の頂点に位置する猛禽類は、一般的にその他の動物に比べて数が少なく、大型猛禽類の多くは絶滅の危機に瀕する野生生物として、「種の保存法」などで保護されています。個体数が少ないということは、1羽の命が種の存続に大きな影響を及ぼすということでもあり、傷ついた動物を治療して再び野生に返すという試みは、個体のみならず種の保存にも直結しているのです。
また、生態系の頂点に位置する猛禽類に焦点を当てて守る行為は、より下位に位置する様々な動植物を含む生態系全体を守る事にも繋がります。そのため猛禽類は、傘下のものを守る「傘」に例えられアンブレラ種として位置づけられています。さらに、数は少ないものの生態系のバランスを保つ重心としての重要な役割を担うことから、これを石橋などの要石(英語でキーストーン)に例えて、キーストーン種とも呼ばれているのです。
このように、猛禽類に着目し、彼らが健全な生活を営めるように努めることは、野生動物のみならず、人間を取り巻く自然環境や生態系全体を守り支えることに繋がっています。
絶滅の危機との戦い
私が代表を務める猛禽類医学研究所は、北海道釧路市にある環境省釧路湿原野生生物保護センターを拠点に、保全医学の立場からオオワシやシマフクロウをはじめとする絶滅の危機に瀕した猛禽類の救護や傷病原因の究明(環境省事業)、調査研究、保護活動を行っている世界的にも珍しい野生動物専門の動物病院です。保全医学は、人間と動物の健康、さらには生態系の健康に関わる領域を連携させることを目的に、獣医学や医学の観点から生物多様性の保全を目指す比較的新しい学問領域です。
研究所が取り扱う絶滅の危機に瀕した猛禽類は、シマフクロウ、オオワシ、オジロワシだけでも毎年50羽以上にのぼりますが、その多くは重傷もしくは搬入時にすでに死亡しています。収容された傷病動物は複数の獣医師らによる医療チームによって、治療やリハビリ、必要に応じた野生復帰後の追跡調査までが一貫して行われています。診療では研究所が所有するガス麻酔器や電気メス、内視鏡、各種画像診断装置などが駆使され、常に最新の鳥類医学の知見や技術を導入するなど、救急救命に最善を尽くす努力がなされています。また最近、酸素が供給できるICUなどを備えたドクターカーが配備され、搬送時から本格的な治療が開始できるようになり、救命率が大幅に向上しました。希少種の保全においては、“増やす”試みと“減らさない”ための対策が両輪として機能しなければなりませんが、私たちは主に後者に重点を置き活動を展開しています。
現状の把握と環境治療
傷病・死亡原因の究明は、診察や死体の病理検査によって行われています。私は30年近くにわたり、傷付いたり死亡した野生猛禽類を診てきましたが、原因の大半は人間が行った様々な環境改変によるものでした。キツネやテンによる捕食や感染症などの自然死も存在しますが、収容原因の多くは人間がもたらす事故や中毒なのです。車との衝突や感電、鉛弾の摂食による鉛中毒が大半を占めますが、近年はバードストライク(発電用風車との衝突)や列車事故が増加傾向にあります。
以前より、人間が野生動物の生息環境に入り込み、破壊していることが問題視されてきました。しかしながら、野生動物も人間が作り出した環境を生活の場として頻繁に利用するようになり、結果として人の生活圏に深く入り込み様々な事故に遭っているのです。
弱肉強食や環境の変化に適応した者が生き残るといった自然界のルールに則り、野生下で生息する個体や種はふるいにかけられ、生態系のバランスが保たれています。しかしながら、人間生活が引き起こしている様々な事故や中毒、大規模な生息環境の破壊は、短期間のうちに野生生物に無差別的な打撃を与える危険をはらんでいます。一方で、人が関与しているが故に、至った過程や原因を明らかにできた場合、人が適切に対処することによって、速やかかつ大幅に発生数を減らすことができるとも言えるのです。
傷付いた野生動物の救命に努めるとともに、彼らの苦痛や命を無駄にしないためにも怪我や病気の原因究明を徹底的に行い、何らかの人間活動が要因となっていた場合には、責任をもって再発防止に向けた対策を進めていく、すなわち“元凶の元栓を閉める”という考え方がとても大切です。傷付いた動物を治すだけではなく、長年の人間活動により病んでしまった生態系や、人間と動物を育む自然環境を健全で安全なものへと治してゆく取り組みを、「環境治療」と名付けて活動の基軸にしています。環境治療により、人間生活がもたらす野生動物の傷病を予防することは、自然界のルールに則って生態系のバランスを保ち、その健全性を向上させることにも繋がっているのです。
野生に戻れない動物たちの支え
猛禽類医学研究所では、様々な医療機器や専門スタッフを配備して希少猛禽類の救命を試みていますが、たとえ一命を取り留めたとしても重度の後遺症により野生に戻ることができなくなった個体も少なくありません。現在、終生飼育を余儀なくされた大型猛禽類は約35羽。国内希少野生動植物種については、重要感染症に罹患しているなどの特別な理由がない限り、原則的に安楽殺という選択肢がありません。動物園などの展示施設に譲渡を打診しているものの、外見上明らかに後遺症がわかる動物についてはほとんど引き取り手がないのが実情です。動物福祉の観点から、可能な限り快適な余生を過ごしてもらえるよう努力していますが、これらの動物の飼育管理に割り当てられる専用の予算は環境省から支給されておらず、本来傷病動物の治療などに使うべき資金を支出せざるを得ない状況が長年続きました。そのままでは獣医療の質に大きな支障が出る恐れがあったため、2017年4月、猛禽類医学研究所はすべての終生飼育個体を環境省の事業対象から切り離す手続きを経て、飼育管理や餌に要する費用を独自に調達することを引き受けました。現在、他の業務で得た収益や寄付金を餌などの購入費に充て、不足する分は漁業者や養鶏農家の協力を得て凌いでいるのが現状なのです。
私たちは、野生に帰ることができない動物達に“活躍の場”を見出したいと考えています。たとえ二度と野生に戻れなくとも、自然界に生きている仲間を同じ目に遭わせないために一役買ってもらえないだろうか? このような考えから、猛禽類医学研究所では環境治療に活用する目的で、様々な事故の予防対策を、野生復帰が困難となった希少猛禽類の力を借りて考案しています。感電事故の防止に効果がある、猛禽類を電柱上の危険な場所にとまらせないための器具「バードチェッカー」については、実際に被害に遭っているオオワシやオジロワシのケージ内に試作品を設置し、終生飼育個体による効果の検証を行っています。そして効果が確認されたものについては、道内で運用中の送・配電柱、約2500カ所で採用されています。交通事故に対しても、ワシなどが道路上を低空で横断飛翔しないように路肩に列状に設置するポールの間隔や形状を、野生復帰は難しいものの短距離の飛翔ができる猛禽の協力を得て研究・開発しています。
また、臨床の現場においても、終生飼育中の猛禽類に輸血のドナーになってもらい、救命率の向上を図っています。さらに一部のワシは釧路湿原野生生物保護センターの展示ケージで飼育され、環境教育にも役立てられています。
普段人目に付かない救護施設のバックヤードで、希少種の保全活動を支えている彼らの生き様をもっと多くの人に知ってもらい、応援してもらいたいと切に願っています。
傷付いた野生動物は、人との間に生じている様々な軋轢や、バランスを崩した自然環境の現状を私たちに伝えてくれるメッセンジャーなのです。
野生動物との共生を目指すには、彼らを「お隣さん」に見立てて付き合っていくことが大切だと思います。日常の生活において過度に意識していないものの、伸びすぎた庭木の枝が隣の敷地に達して迷惑が掛かるかも知れないと剪定したり、ステレオの音がうるさいかも知れないとボリュームを絞る。「お隣さん」は普段気にしていないようで実はどこかで気にかけている存在であり、自分の行動によって彼らに迷惑が掛からないかな?と現状を俯瞰的に見直し、必要に応じて自制することが良い関係を続けて行くために大切です。これが、長い間この地球上で共に生きてきた野生動物との付き合い方であり、彼らとより良い関係を築いて行くために必要だと思っています。
猛禽類医学研究所 代表・獣医師 齊藤慶輔
リターン
5,000円

IRBJステッカー 限定Ver.
・お礼のメール
・プロジェクトの活動報告書(PDF)
・IRBJステッカー 限定Ver.(通常Ver.の7cmが10cmの大サイズに)
※一度に複数口のご支援も可能となっております
- 申込数
- 297
- 在庫数
- 制限なし
- 発送完了予定月
- 2022年6月
5,000円

ポストカード 限定Ver. 3枚セット
・お礼のメール
・プロジェクトの活動報告書(PDF)
・ポストカード 限定Ver. 3枚セット
*新規制作:終生飼育ワシ1,ちび1,岡田先生細密画1
*野生動物画家 岡田宗徳(http://atelier-mansell.com/)
※一度に複数口のご支援も可能となっております
- 申込数
- 187
- 在庫数
- 制限なし
- 発送完了予定月
- 2022年6月
5,000円

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- 申込数
- 297
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- 制限なし
- 発送完了予定月
- 2022年6月
5,000円

ポストカード 限定Ver. 3枚セット
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*新規制作:終生飼育ワシ1,ちび1,岡田先生細密画1
*野生動物画家 岡田宗徳(http://atelier-mansell.com/)
※一度に複数口のご支援も可能となっております
- 申込数
- 187
- 在庫数
- 制限なし
- 発送完了予定月
- 2022年6月

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- 756,000円
- 支援者
- 36人
- 残り
- 88日

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