カンボジア人作家紹介：ソッピア・ドーン

 

『両親の離婚。姉への感謝。絵を描くことで、心の傷を癒していた。』

 

1993年、建築業で働く父と洗濯業を営む母の５人兄弟の次女として生まれました。

　子どもの頃から、実姉のソクペアックが教科書や本などに載っている絵を真似て絵を描いているのを見て、彼女も一緒に絵を描いていました。最初は、姉と同様、本の絵を真似て描き、お互い見せ合って楽しむような生活を送っていたそうです。

 

　高校１年の時に両親が離婚し、家計が苦しくなりました。母は叔母が経営しているゲストハウスの洗濯の仕事や自宅で家庭用品の販売をしていましたが一人の収入では生活は苦しく、姉のソクペアックは母親とともに家計を助けることを決心し、やむなく高校を中退してしまいました。ソッピアは、母親や姉、親戚の支援により学業を続けることができ、高校生活を続け卒業し、大学にも進学することができました。自分や弟、家族の為に高校を中退し働いてくれたひとつ年上の姉ソクペアックに対する尊敬と感謝の気持ちを持ち続けています。

 

　学校と家の仕事を手伝いながらも、絵を描くことは続け、父を失った悲しさなどを癒していたそうです。描いているうちに、彼女の空想の世界は広がり、ゾウが自由に空を飛び、蝶と遊び、踊ったりする温かく、ファンタジックなものになっていきました。そしてこの頃、姉が知り合ったバッタンバン州出身のカンボジア人アーティストに絵を教えてもらえるようになりました。最初は、姉とともに絵を学べることの喜びを感じていましたが、彼女の描くファンタジックな絵は、彼からは全く評価されず、ひどい罵りの言葉も浴びたそうです。このことに彼女は、深く傷つき、絵を描く楽しさを失いかけていました。

 

『美術スクールと出会い、再び描くことの楽しさを実感。』

 

　ある日、高校の友達であったクンティアから、日本人が始めた美術スクールがシェムリアップにできたことを聞きました。カンボジア人アーティストに中傷されていたことから立ち直っていませんでしたが、姉達の説得で、一緒に学校に行ってみることにしました。そこには、今まで使ったことがない日本や海外からの画材があり、無料で自由に使わせてもらえるということに驚きました。そして、何よりも「何でも自分が表現したいものを、自由に描けば良い」という笠原のアドバイスの言葉に嬉しくなり、傷ついてくじけかけていた心に再び絵を描きたいという意欲が湧いてきました。

 

『子ども達とも描く事の楽しさを共有したい。』

 

　現在は、小さな美術スクールでの美術助手としてだけでなく、オー村の小学校の美術授業、ギャラリーでのワークショップ等を担当し、姉とともに学校にとってもなくてはならない存在となっていて、彼女の持つ独特なファンタジックで温かな作品は子ども達にも大きな影響を与えています。

彼女の夢はカンボジアの次世代の子ども達に自分が経験してきた描くことの楽しさを伝えていくことだそうです。　

 

作品応募歴:

2015年：KDDI 財団チャリティーコンサートポスターデザインに採用される。

 

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