寄付総額
目標金額 3,000,000円
- 寄付者
- 249人
- 募集終了日
- 2024年2月29日
人々を魅了した劇場から悲しみ以外のすべてが消し去られた
野戦用ベッドが並ぶかつての劇場

ウクライナ東部のトランジットセンターは、戦争によって直視できないほどの犠牲を強いられた前線地域から避難してきた人たちのための避難所です。このセンターはかつては大きな拍手が響き渡り活気にあふれた場所でした。今は壁側に寄せられている赤いベルベットの座席は、かつては紫色のカーテンの下で拍手と歓声を送る観客を抱きしめていました。そしてかつて音楽が高鳴り、俳優が物語に命を吹き込んだ舞台には野戦用ベッドが並び、ヒーターが1台置かれています。
人々を魅了した劇場から悲しみ以外のすべてが消し去られた
ピンクのバスローブを着た女性がヒーターに手をかざし、暖を取ろうと体を揺らしています。まるでダンスの亡霊を呼び起こし、もはや優美さのないこの場所に優美のこだまを響かせているかのようです。しかし、これはバレエでも、かつてはライトを浴び、壮麗で人々を魅了した優雅なパフォーマンスでもありません。これは生きるための懸命な動きであり、暖を取るための静かで哀しいダンスなのです。
グランドピアノは緑色の布に覆われ、ひっそりと忘れ去られています。まるでこの壁で囲まれたホールの中に喜びが響いていた時代の遺物となったかのようです。
今では、この空間から悲しみ以外のすべてが消し去られてしまっています。空気は冷たく静まり返り、時折小さな咳や足音が聞こえるだけです。舞台を縁取る白いカーテンが隙間風にかすかに波打つのは、まるでこの場所がこのような状況になってしまったことを嘆くかのように見えます。
「私は忘れ去られたのです」ラリサ(66歳)
かつて17列8番席があった場所に、66歳のラリサが座っています。彼女の小さな体は、寒さをしのぐにはほとんど役に立たない厚手のコートに包まれています。彼女は寝る時も、彼女に残された全てである、帽子、コート、靴を身につけているのです。

屋外を吹く風は壁を強く打ち付け、悲痛な叫び声のような音がホールに響き渡り、ホールにいるすべての人を凍えさせます。ラリサは細い肩にコートをしっかりとかけています。
「ポクロフスクではもっと寒かったです。暖房も電気も・・・何も残っていませんでした。」
殺されるのが怖くて、外を歩くのも必死で、彼女はできる限り家の中にいました。次の爆発を恐れ、何かが家を襲うのを恐れ、誰かが助けてくれるのを待っていました。
「転んで起き上がれなくなるのが怖かった。だから、家にこもって待っていました。助けてくれる人は誰もいなかった。みんな私を置いて行ったのです。子供たちも、近所の人たちも、みんな去っていきました。私は忘れ去られたのです」
そう言うと彼女は言葉を切り、視線が遠くなり、声が途切れました。何が起こったのか説明する言葉さえ失ってしまった沈黙でした。
みんながひとりぼっちと感じないよう全員に声をかける
近くでは、CAREのパートナー団体のソーシャルワーカーであるタチアナが、ホールを走り回っています。彼女は避難している人々に優しい言葉をかけながら、毛布やスープを提供しています。「ラリサは今日は少し食べました」とタチアナは静かに話します。
「何が起こったのかを理解し、彼らの経験によるトラウマから心を開くには時間がかかります。私はみんながひとりぼっちと感じないよう、全員に声をかけるようにしています。おむつを替えたり、車椅子を介助したり、書類仕事をしたり、トイレに案内したりすることもあります」
彼女は常に動き回り、可能な限り全員の面倒を見ています。トイレを探している年配の女性を見つけると、タチアナは走っていきトイレのドアまで案内します。
置き去りにされた黒猫が避難民にささやかな安らぎを与える
ラリサはタチアナに目を向けた後、自分の手に視線を戻しました。
「怖くて水が飲めないんです。」と、話します。
ラリサは脱力感に襲われ、野戦ベッドから出れなくなることがあります。
「ボランティアは私に水を飲むように言うけれど、飲めないんです。今日はトイレで転んで起き上がれませんでした」
彼女は声を震わせました。
「私はもう必要とされていないのです」ラリサは続けます。
「私の家がまだ建っているのか、それとも瓦礫と埃の中に消えてしまったのかさえわかりません。私が家を出たときは、壁はひび割れバスルームは穴が開き、新聞紙で穴をふさいでいました。」
彼女の声はかすれ、コートをさらに強く引っ張り、まるでコートで自分を支えようとしているかのようでした。鋭い目をした黒くてふわふわした猫が彼女のベッドに飛び乗りました。トランジットセンターを歩き回っているこの猫は飼い主に捨てられ、今はここに避難している人々の世話をしています。ここで暮らす人たちにすり寄り、足を温め、ささやかな安らぎを与えているのです。この猫も、ここにいる人たちと同じように、置き去りにされた難民です。ラリサはぼんやりとその毛を撫でながら、「今は私とこの猫だけ。他のみんなはもういません」と言います。
危険な場所に行く仕事は賭けであり、勇気が必要なこと
外では凍てつく風の中、かつては鮮やかな黄色でペイントされていた避難バスはペイントが汚れと灰に覆われくすんでしまっています。埃にまみれた窓には、電話番号とともに「EVACUATION」の文字が赤い太字で書かれています。毎日、CAREのパートナー団体のバスがトランジットセンターに新しい避難者を運んできます。ヴィタリイ(55歳)はそのうちの1台の運転席に座っています。バスのドアがギシギシと音を立てて開き、彼は外に出ました。彼はまるで自分の仕事の恐ろしさに麻痺している人間のように、冷静に効率よく動いています。
「私はずっとバスの運転手でした。これも仕事のひとつです。電話がかかってきて、何人乗せるか言われて、出発します」
しかし、彼の言葉は、彼の仕事の危険性を言い表していません。ポクロフスクに行くことは、前線が忍び寄る中、賭けであり、勇気が必要なことなのです。常に砲撃の音が聞こえ、彼が着ている防弾チョッキは、その危険を否応なしに思い起こさせます。
「一番つらいのは、避難民を乗せて戻るとき、彼らが首をたれ、先の見えない未来を見つめて沈黙していることです」と彼は言いいます。
残されたわずかなものにしがみつく場所
ここ数カ月、CAREのパートナー団体は毎日15人前後を避難させています。避難者のほとんどは40歳から60歳で、まだ新しい生活を始められると信じる人たちです。高齢者やラリサのように動くことが難しい人々は、ホールに取り残されることが少なくありません。バスは12:00から13:00の間に到着し、15分ほど滞在した後、できるだけ早く出発します。到着した人々の80%は、そのまま列車で西へ向かうか、迎えにきた家族と一緒に帰ります。残りの人たちは、ラリサのように、ソーシャルワーカーが長期滞在できる場所を見つけるまで、古いコンサートホールにとどまるのです。
ホールでは、大がかりなドラマが上演される代わりに、今は異なる光景が映し出されます。
かつて音楽と喜びに満ちていた空間にあるのは、今ではすべてを失った人々が残されたわずかなものにしがみついている——それは、自分の命と、わずかな持ち物、そして彼らを救い、食事やトイレの手助けをしてくれる支援者たちの温もりです。
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今回は、より多くの方々にウクライナの「今」について知っていただく機会として、2025年2月20日にオンラインイベントを開催することになりました。
国連機関や国際NGOなど、様々な立場からウクライナ支援に直接携わる国際協力の現場に精通した4名を中心に、当事者目線でのウクライナのリアルについて、深堀していきます。
「ウクライナの人々が、今、何を思いどのような生活をしていてどのような支援を必要としているのか」
「国連機関と国際NGOの支援のかたちや違いについて」
など、「国際協力」に馴染みのない方にもわかりやすく解説します。
また、イベント内で直接皆さまからのご質問にもお答えしていければと思います。
平日の夜の時間帯ですが、ぜひ、お気軽にご参加いただければと思います。
たくさんの皆さまのご参加を、心よりお待ちしております。
イベント詳細
■日時:2025年2月20日(木)20:00~21:30
■会場:オンライン(Zoom使用)
■テーマ:ウクライナの「今」、国連と国際NGOの支援のかたち、違い など
■参加費:無料(どなたでもご参加いただけます)
■参加方法:お時間になりましたら、こちらからお入りください。
スピーカー紹介
本田 綾里氏
国連人口基金(UNFPA)ウクライナ事務所 SRHプログラム・マネジメントオフィサー
国連女性機関(UN Women)本部、政府間支援部で「第63回女性の地位向上委員会」の準備や加盟国間の調整業務に従事。その後、外務省にて国連本部との調整業務、腐敗対策、人身取引対策業務に携わる。国際NGO(ネパール駐在員)で子どもの支援事業のプロジェクト・マネージャー。2023年10月より現職。性と生殖に関する健康(Sexual and Reproductive Health)関連のプロジェクト進捗管理を担当。
横井 水穂氏
国連開発計画(UNDP)ウクライナ事務所 人間の安全保障と多次元危機プログラム・マネージャー
1998年、JPOとしてUNDPガーナ事務所にて赴任(ガバナンス担当)したのち、UNDP東京事務所、UNDPアフガニスタン事務所、UNDPマラウイ事務所、UNDPイラク・エルビル事務所、UNDPナイジェリア北東部地域事務所長として紛争・危機対応などに従事。2022年より、UNDPウクライナ事務所に勤務。プログラム・マネジャーとして戦時下のウクライナでの復興支援を実施、運営している。
滝澤三郎氏
東洋英和女学院大学名誉教授、ケア・インターナショナル ジャパン副理事長
カリフォルニア大学MBA。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)など、国連機関で28年間勤務し、長きにわたり難民政策に携わり、その後、東洋英和女学院大学で教鞭をとる。日本の難民政策などについて著書あり。
児玉光也氏
ケア・インターナショナル ジャパン事務局長
20年以上にわたり、自然災害・紛争等に対する人道支援、国際保健、開発の現場を中心に実務および研究を行う。国際機関及びNGOではハイチやケニアなどでエイズやコレラ等保険医療対策、国内外の大学で研究・教育に携わり、外務省では緊急・人道支援分野政策立案、バングラデシュとアフガニスタンの日本国大使館では、保健、教育、地雷除去、NGO支援等の実務に従事し、2023年12月から現職。
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