現在のプロジェクト進捗状況ご報告（第２弾）

皆様、いつも多大なるご支援を頂き、ありがとうございます。ご支援下さった皆様に向けて、2021年4月ご報告時からの研究の進捗状況をご報告致します。

 

 

 

 

解析グループでは、原発不明がん患者さんの、正常な細胞とがん細胞の遺伝情報を取り出してその配列情報の解読を行い、21症例の原発不明がん21検体について、全ゲノム配列情報解析を行いました。（図１）

 

 

 

　　図１：原発不明がん21検体のゲノム異常パターン

 

 

一般的にがんは症例ごとにとても多様です。原発不明がんでも、図1に示すように多様なゲノム異常のパターンを示しました。１腫瘍あたり１塩基置換（ゲノム情報の１文字が別の１文字に置き換わる変異）は4,072〜116,690箇所、挿入欠失（ゲノム情報の文字が数個、入り込んだり落ちたりする変異）は1,497〜7,110箇所、コピー数異常（両親から受け継いだ遺伝子のコピーの数が増えたり減ったりする変異）は5〜192箇所、構造異常（ゲノム情報が通常は繋がらないような箇所と繋がってしまう変異）は0〜896箇所見つかりました。

また、原発不明がんの原因を推定するため、塩基置換の特徴を抽出しました。（図2）

 

　　図2：原発不明がん21検体の塩基置換の特徴

　　（左：塩基置換パターン、右：遺伝子変異を起こした原因）

 

この解析によりタバコやアルコールが原因と考えられる腫瘍が含まれていることが確認できました。

がん細胞の増殖に重要な遺伝子変異もTP53, CDKN2A, MYC, PIK3CAなど多数見つかっており、中には薬物治療の対象となる遺伝子変異も含まれています。

このように、これまでの結果から、原発不明がんに対して全ゲノム塩基情報解析を行うことは、がんになった原因の推定や薬物治療の対象の選定に有用であると考えられます。

 

今後は一人一人の腫瘍検体をより詳細に解析し、薬物治療の可能性をさらに追究します。また、患者さんのゲノム情報と臨床病理情報と突き合わせて、原発巣がどこの組織由来なのか検討を進めます。

さらに、どのようなタイプの免疫細胞が腫瘍組織内にいるかを検討して免疫治療のターゲットを検索します。

 

本研究は、皆様のご支援とともに、検体採取にご協力頂いた患者さんのおかげをもちまして、取り進めることができます。この場を借りて御礼申し上げます。

原発不明がんの治療法解明に向けて、これからも鋭意研究を進めて参りますので、

引き続きのあたたかい応援を何卒よろしくお願い申し上げます。