地球の宝を守れ|国立科学博物館500万点のコレクションを次世代へ
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地球の宝を守れ|国立科学博物館500万点のコレクションを次世代へ 2枚目
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支援総額

916,025,000

目標金額 100,000,000円

支援者
56,584人
募集終了日
2023年11月5日

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2023年10月19日 08:00

かはくの偏愛研究室 番外編|02 人類研究部・藤田先生が綴る「釣針」への愛

毎週木曜19:00〜19:30に放送中の、クラウドファンディング特別企画「かはくの偏愛研究室」。


かはくに所属するさまざまな分野の研究者が登場し、かはくに収蔵されている約500万点のコレクションの中から、自身の「推し」をご紹介。資料への愛を語るYouTube番組です。

 

今回はその番外編。配信ではなく、研究者自身が、推しコレクションへの愛を綴ります。

 


 

執筆者|藤田祐樹(人類研究部)

 

profile

藤田祐樹(ふじた・まさき)
旧石器時代の人類史に興味があり、国内各地の洞窟遺跡を調査している。沖縄島のサキタリ洞遺跡(沖縄県立博物館・美術館との共同調査)で、2万3千年前の世界最古の釣針を発見したことが自慢。

 

 

小さな針が成し遂げたこと


 遺跡から発掘された遺物は、原則として発見された国や地域で所蔵されるため、現地に行かないと出土品を見ることも調べることもできません。そこで、人類研究部では世界各地の貴重な遺跡出土遺物のレプリカを集めて、研究や展示に活用しています。


 その中から今回、紹介するのは、ウクライナのメジリチ遺跡で発見された約1万5千年前の骨製の縫い針のレプリカです。地球館地下2階で展示していますが、長さ約5㎝と小さいながら、とても精巧に作られています。何より驚かされるのは、材料こそ違うものの、現代の金属製の縫い針と同じ形をしていることです。旧石器時代の発明品を今でも使っているというのは、それだけすごい発明だったといってよいでしょう。

 

ウクライナのメジリチ遺跡で発見された旧石器時代の骨製釣り針(レプリカ)

 

 この縫い針を好きなもうひとつの理由は、その使い方です。ウクライナは冬には氷点下になるような寒い地域ですが、氷河時代でもある旧石器時代には、さらに寒かったはずです。そこで、旧石器人は骨の縫い針で毛皮を縫い合わせ、寒さに耐えられる衣服を作ったのです。

 

 私たちホモ・サピエンスは、旧石器時代に寒冷地や高地、島嶼など世界中のありとあらゆる場所に移り住み、それぞれの地域で多様な文化を作り上げました。寒冷地へ移住した旧石器人は、この骨の縫い針や、同じくメジリチ遺跡で発見されたマンモスの骨や牙を組みあわせた住居を作って寒さを乗り越えたのです。小さな縫い針が、移り住める場所を大きく切り開いたとしたら、夢のある話だと思いませんか?

 


マンモスの骨や牙を骨組みとした住居(復元模型・地球館地下2階に展示)
 

 

島での暮らしに必要なものとは…

 


島の旧石器人が暮らしたサキタリ洞遺跡。左手前が発掘調査区。

 

 海を越えて島々に移り住むにあたっても、様々な発明や工夫が必要だったはずです。沖縄県立博物館・美術館と国立科学博物館が2009年より共同調査をしている沖縄のサキタリ洞遺跡では、そんな発明品が見つかりました。世界最古となる2万3千年前の貝製釣り針です。ニシキウズガイ科の巻貝の平らな底部を磨いて作られており、真珠層の美しい輝きと均整のとれた湾曲、尖った先端に見惚れてしまいます。釣り針と一緒にアイゴやブダイ、オオウナギの骨が見つかっているため、これらの魚を釣るのに使ったのでしょう。

 

 こうした旧石器時代の貝製釣り針は、近年、沖縄や東南アジア島嶼域など西太平洋島嶼域で続々と発見されています。ホモ・サピエンスが世界で最初に島々に移り住んだこれらの地域では、魚介類を食用や貝製品などの素材として活発に利用したことも明らかになっています。面積が小さく周辺から隔離された島では、陸上動物や石器製作に適した石材も限られています。貝殻で釣針を作って魚を釣ることは、そうした島での暮らしに不可欠だったのでしょう。縫い針が寒冷地への移住を実現したように、釣針が島での暮らしを実現したと言えそうです。

 


サキタリ洞で発見された世界最古の貝製釣り針(所蔵:沖縄県立博物館・美術館)

 

 ちなみにこの釣り針、本当に釣れるのか疑問に思う方もいるかもしれません。そこで、私も貝殻で釣針の復元品を作り、実際に魚を釣ってみました。釣り糸は現代のテグスを使ってしまいましたが、なんと、95㎝、3㎏と良型のオオウナギを釣り上げることができました。ただし、本来は石器で叩いて貝を割り、砥石で磨いて形を整えるのですが、真珠層の発達した貝は固くて思うとおりに割ることがどうしても難しく、私は電動のルーターを使ってしまいました。私の釣針製作技術が旧石器人に遠く及ばなかった点は、どうかご容赦ください。

 


釣針の強度を調べるために作った復元品。形と大きさはやや異なるが、良型オオウナギを釣り上げることができた。

 

 サキタリ洞では、もうひとつ面白い発見がありました。ものすごい量のモクズガニの殻です。モクズガニは、日本各地で昔から秋の味覚として食される淡水性のカニで、上海ガニに近い仲間です。旧石器人というと、石槍を手にナウマンゾウやシカを狩る勇壮な姿がよく描かれますが、サキタリ洞では、オオウナギを釣り、山盛りのモクズガニを食べていたのです。

 

 しかも、どうやらモクズガニがおいしくなる秋に限定して食べていたらしいのです。サキタリ洞ではカワニナ(川に棲む巻貝)も食べられているのですが、カワニナの殻には普通の酸素と重さの違う酸素が含まれています。この重さの違う酸素の割合が、水温によって変化するため、貝殻の成長線にそって酸素の割合を調べれば、カワニナの経験した水温変化から季節を推測することができます。そして、食べられる直前に作られた成長線の端の季節を調べたところ、秋に食べられていたことが分かったのです。どうして秋かといえば、モクズガニが美味しい季節だからと考えるのが自然です。現代の私たちと同様に、旧石器人も旬の食材を味わっていたとしたら、なんだか嬉しくなりませんか。
 

 

コレクションとは、「知りたいという強い気持ち」である


 私が関わっているコレクションは、上述のように発掘調査で見つかった旧石器時代の遺物です。もともとは、遠い昔の人々が暮らすために作ったり捕まえたり集めたりした品々です。食料は単に食べていただけでなく、美味しい、美味しくない、好き、嫌いを感じていたはずです。食料を得るための狩猟や漁労も、成功すれば喜び、興奮したのではないでしょうか。日々に使う道具も、時間と労力をかけて美しい形に仕上がったら、達成感を覚えたに違いありません。ビーズや腕輪は、オシャレを楽しんだり好きな人にプレゼントしたり、見栄を張ったりした証かもしれません。家族や親しい仲間を失った悲しみが、彼らにお墓をつくらせたのかもしれません。遺物を調べていくと、そうした旧石器人のさまざまな感情にあふれた暮らしを思い描くことができます。


 そうした遠い祖先たちのことを知りたくて、私たちは発掘調査をしています。発掘と聞くと宝探しのような行為を思い浮かべるかもしれませんが、実際にはそれほど華々しい行為ではありません。腰痛や老眼と戦いながら、洞窟の片隅にしゃがみ込んで来る日も来る日も根気よく土を掘り、小さな石器や貝器を探すのです。暗がりの中では小さな遺物を見落としてしまう危険もあるので、掘った土をすべて洗って中身を取り出して確認します。たくさんの動物骨も、種類ごとに分けて数を数え、食べたものか自然に堆積したものかを検討します。どの作業も、地味で時間のかかる作業です。そうした努力を重ねた結果、私たちは幸運にもサキタリ洞で大発見に恵まれましたが、時には期待した成果が得られないこともあります。そういう場合にも、別の洞窟を探すか、同じ洞窟の別の場所を掘るか、あと10㎝掘ってみるべきか、次にやるべきことを考えながら探し続けます。


 どうして、そこまで苦労して遺物を探すかと言えば、昔の人々の暮らしを知りたいからです。そんなこと知らなくても、別に生活に困ることはありません。でも、昔の人々の暮らしを知ることは、とても魅力的です。さんざん苦労した末に、世界最古の釣針を見つけた興奮といったら!その釣針を真似て貝製釣り針を作り、やっとオオウナギを釣り上げた嬉しさといったら!サキタリ洞の旧石器人が旬のカニを味わっていたと知ったときの驚きといったら!…そうした経験を重ねると、会ったこともない大昔の人々が、まるで自分の家族か、親密な友達のように思えてきます。すると、より一層、彼らのことを知りたいという気持ちが強くなります。知りたい気持ちが強くなると、また調査に行きたくなります。ですから、私にとってのコレクションは「知りたいという強い気持ち」です。


 皆さんも、知りたいことがたくさんあるのではないでしょうか。生き物や自然には、それぞれに魅力があり、私たちの知らないことであふれています。昔の人々の暮らしだって、私たちが知っているのは、ほんの一部にすぎません。私たち国立科学博物館は、そうした皆さんの知りたい気持ちに応えるためにも、これからも調査を続け、コレクションを増やし、展示などを通じて知る喜びを皆さんと共有していきたいと思っています。

リターン

15,000+システム利用料


【一押し!】【寄付控除あり】 かはくオリジナル図鑑

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※本コースも、「寄付控除あり」に変更いたしました(10/20変更)

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当館の全研究者が、自身の「最推し」標本を選び、解説したものを1冊にまとめた本クラウドファンディングのオリジナル「図鑑」。
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※図鑑は、130ページ前後になる予定です。画像は、そのうちの一部(恐竜の専門家・真鍋副館長の担当ページ)のイメージです。最終的なデザイン・内容は変更となる可能性もございます。
※寄付金領収証のみ、2023年12月中にお送り予定です。

>>詳細は「活動報告」欄にも紹介記事がございます。

申込数
39,306
在庫数
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発送完了予定月
2024年3月

5,000+システム利用料


【オリジナルグッズ】【寄付控除あり】 トートバッグ

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※本コースも、「寄付控除あり」に変更いたしました(10/20変更)

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研究者が日々の研究で使用した「研究ノート」の一部をデザインとした、本クラウドファンディングのオリジナル「トートバック(全5種類)」。
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■貝のスケッチ
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■ボーリングコアのスケッチ
■太陽黒点スケッチ

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>>詳細は「活動報告」欄にも紹介記事がございます。

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