【劇場の声②】スペースベン

全国小劇場ネットワークに参加している劇場が、現在の活動をレポートします。

 

 

 

【劇場の声②】スペースベン

 

「スペースベン」という小さな芝居小屋が青森県八戸市にあるのをご存知でしょうか。

 

もちろんご存知無い方がほとんどですね。

 

オープン時に名称についていろいろ考え、「闘う場」的な意味合いのネーミングにしようとしたものの良い案が浮かばず、最終的には主宰である私が小さい頃から「ベン」と呼ばれていたので、スペースベンと名付けることになりました。

 

私自身演劇に携わっていたこともあり、平成元年に自宅を建てる際に、稽古場的な物を併設出来ないかと検討し、八戸市の中心街から歩いて10分ほどの場所に自宅兼集会所を開設しました。

 

当初は稽古場としてのみ使用していたものの、平成6年から毎週金曜日の夜に、FANS（Friday Amusement Negative Shop）として30分程度の演劇・ダンス・ライブ・展示の企画、最近では市民による落語など、とにかくやりたいことを開催しつつ、新作を上演出来ない時は集まった人達で「だべり場」としてカフェ的に解放し、現在、開催回数は1370回を超えています。FANSでは、積極的にPRし新規顧客を増やすというより、文字どおりFANを増やすことに力を入れています。

演劇などを上演するにしても、こんな狭いスペースで果たして何が出来るのか？

舞台面は間口最大4間、奥行き2間。客席も詰めて最大60席とかなり狭い小屋ながら、舞台をどの方向に設営するかなど自由度を高くし、柔軟な対応を心がけることにしました。スペース的に見ても少人数の出演の作品が多く、地元演劇人による上演が多いものの、最近では北区AKT STAGEに上演していただくなど、外来公演も交えつつ広がりを図り、運営については基本的に私と関係者の数人で対応しながら利用団体の要望に合わせ、必要に応じて地元イベント会社と連携しつつ対応して来ました。

 

 

そんな中、新型コロナウイルスの襲来です。

コロナ禍の中、2月末から一般開放は控え関係者のみの打合せとし、特に4月末から5月のゴールデンウィーク中は、県の休業要請に応え全面休業しながら、「再開」に向けた手立てを模索していました。ネットワーク内の他小劇場の感染症対策も参考にしつつ、地域の特性も考慮し、出退名簿を明確にすることはもちろんのこと、受付での検温、関係箇所の消毒の徹底、充分な換気、社会的距離の確保、情報の共有など、対策体制を充分に整えながら、地域の中で何が出来るのか、「再開」に向けて考えているところです。

まずはその第一弾として、3月に中止となった「第16回八戸ダンスプロジェクト」を6月から分割開催することで準備を進めています。これは、スタッフ及びダンサーを希望する高校生を中心としたメンバーが、地元の舞台監督・音響・照明・舞台美術・デザイン・制作・アナウンスなど、第一線で活躍する人達から指導を仰ぎ、チケット販売をはじめ一から舞台作品を作り上げようとする企画です。

残念ながら今回はその手法は叶いませんし客席も従来の15%ほどしか確保出来ませんが、上演予定だった作品をやっと送り出すことが出来ます。

全国小劇場ネットワークの中でも最も小さい劇場の一つだと思いますが、皆さんのご意見を伺うにつれ心新たにし、時には観客に寄り添い、時にはアーティストに寄り添いながら、スペースベンの当初の基本理念であった「闘う場」ということと、“ここに来れば何か面白いことをやっている”という遊び心を忘れずに、今後とも取り組んでいきたいと思っています。