劇場の声11　百景社アトリエ

全国小劇場ネットワークに参加している劇場が、現在の活動をレポートするシリーズ。

 

本日は、「百景社アトリエ」（茨城県土浦市）です！

 

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百景社アトリエは、茨城県土浦市にある小劇場空間で、JR常磐線の土浦駅から徒歩30分程度、旧水戸街道の通る住宅地のなかにあります。

 

 

百景社アトリエは、劇団である百景社が運営しているアトリエです。私たちが創作・公演を行う場ですが、それだけでなく、他地域からアーティストを招いて公演や舞台芸術祭を開催するなど、地域における演劇の窓口といった存在にするべく活動しています。

 

アトリエでは、2月2日(日)に百景社が上演して以降、公演の予定はまだ入っていませんでした。公演の行われていないときも、アトリでは、百景社が稽古やワークショップなど行っているのですが、茨城県から休業要請の出た4月中旬以降はそういった活動も休止し、要請解除まではオンラインで読み合わせなどを行っていました。

 

もともと今年度前半は充電期間として、アトリエでの公演活動は行わない予定だったのです。しかし、感染症対策などの色々な制約があるなかで、アーティストがどう距離感をはかり、創作や上演をしていくのか。それを、百景社だけでなく、複数のアーティストと、お客さんを交えて、考える機会を持ちたいと考えました。

そこで、ひとつの実験という意識で、あえてこのタイミングで、アトリエを開いてみることにしました。劇場としての判断というよりは、作品を作る側として、開くことを選択した形です。

 

こうして、6月24日・25日と、7月4日・5日に、「アトリエ開きます」と題して２週末にわたって公演を行いました。

 

 

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まず、感染症対策として行ったことをいくつか紹介します。

 

 

これらの取り組みは事前にホームページなどでも告知を行ないました。検温や消毒は色々な場所で行われているので、観客側も慣れており、スムーズに行えました。

公演は私たち以外にもアーティストを迎え、4作品上演されました。

今の状況に対してどうアプローチするか、どのような距離感をもって上演していくかについて、それぞれのアーティストごとに異なる取り組み方が現れていますので、簡単にご紹介します。

 

theater apartment complex libido:「libido: AESOP 0.1」は、イソップ寓話３本を、1つめはラジオ(生の音声)で、2つめはテレビ(生の映像)で、そして最後はビニール幕越しの舞台上で演じるもので、徐々に観客との距離感を近づけていく構成となっていました。作品が進むごとに観ているこちらが使う感覚のチャンネルが増えていき、生身の俳優が現れたとき全てのチャンネルが開いた感じがあり、観劇をしていると実感しました。

 

theater apartment complex libido:「libido:AESOP 0.1」

 

百景社×仲谷智邦「駈込み訴え」は、俳優一人によるドラマリーディングです。俳優と客席の間隔を2m以上とっただけで、4作品のなかでは、これまでの公演と一番変わりなく行いました。観客の側で、コロナ以前と以後での、自身の変化を感じたりまた意外と平気な部分を発見したりするきっかけになっていたらと思います。

 

百景社×仲谷智邦「駈込み訴え」

 

AAPA「触れる」は、コンタクトインプロビゼーションのレクチャーパフォーマンスです。触れることから始まる即興ダンス・コンタクトインプロの実演を観て、時にはダンサーの解説や動きに合わせて観客も自身の肌に触れながら、触れる感覚に改めて目を向けていく時間でした。

 

AAPA「触れる」

 

鎌ヶ谷アルトギルドのドライブインシアター「folklore」は、車に乗ったままで観る、全く新しい形での演劇公演です。音声はカーステレオから流れ、パンフレットなどもメールで届くという、同じ場に集まってはいますが完全非接触で行えるものでした。観客の反応は好評でしたが、「遠慮なく笑ったりできるけれど、拍手や反応が俳優に届かないのが悔しい」という感想もいただいたのが印象的でした。

 

鎌ヶ谷アルトギルドのドライブインシアター「folklore」

 

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今回の公演はあくまでも実験的なものでした。一旦落ち着いていた感染者数も再び増加しており、今後も地域の状況をみながら活動していく必要があると感じています。

 

人が集まり、時間と場所を共有する場をつくったことで、今の感覚や距離感について、アーティストやお客さんとともに感じ、考える機会を得ることができました。また、この活動をみたことで、公演をやりたい、稽古場として使いたいという相談もいただき始めています。

 

これからまだまだ状況が変化していくなかでも、考え、実践することを繰り返すための場として、地域やアーティストに向けて開いていきたいと考えます。

 

 

百景社アトリエ　根岸佳奈子