【第4話 引退の危機】

トップインストラクターを務める私のアニマルヒストリーをお話します。


両脚タックルを少し覚えたくらいでうまくいくほど甘くはなかった。勝ったり負けたりを繰り返し、一年時は全国大会には行けなかった。

今であれば、タックルを生かすためにその前の動作の練習が大事だということに気づくのだが、当時はもっと早く入れば！もっと強く当たれば！とタックル自体の動きのことしか考えていなかった。
何で倒すかではなくどう倒すか。その視点がなかった。しかし、ひたすら反復したタックル自体がビッカビカに磨かれたことは間違いない。

高校2年になり、始めての全国大会に出場することができた。なんとグレコローマンスタイルでだった。
レスリングにはフリースタイルとグレコローマンスタイルがある。違いはフリースタイルは全身へ攻撃することが認められているが、グレコローマンスタイルは上半身のみ攻撃が許される。
つまり、得意の両脚タックルが使えないのだ！

それでも奇跡的に全国大会では決勝まで辿り着いた。決勝はあっという間に負けたが、この全国大会2位という結果は素直に嬉しかった！

やはりフリースタイルで全国大会に行きたい。しかし、夏のインターハイには出れず11月に行われる全国大会の予選を勝ち抜くことを目標に一直線に向かって練習した。
本戦が3月に行われる為、2年生以下の選手だけが出る予選だった。同級生には負けられない！絶対に勝つんだ！

勝てば全国だという試合で、それは起きた。相手に投げられる時に無理な体勢で守った結果、右肘を脱臼して靭帯を両側断裂してしまったのである。

病院に運ばれて麻酔を打たれ検査などが終わり、眼が覚めると先生が母親に頭を下げていた。そして母は「もう競技はできないだろう」と医者からの伝言を私に伝えてきた。





『次回、きちんと青春』