ピザ屋で暮らす黒猫のお話（その2）

 

ある日、ピザ屋さんの入口でご飯を待つ黒猫に出会った私は、店長さんと交渉して毎日のお世話をすることになりました。

 

私がピザ屋さんへ通うようになって起きた最大の変化は、2週間に1度ほどピザを食べるようになったことです。

 

黒猫にご飯をあげることを渋々ながらも承諾してくれた店長さんと、黒猫へご飯をあげてくれていた店員さんへの感謝の気持ちをピザの購入に代えて示していたのですが、食べてみると意外と安く美味しいことに気付きました。

 

ピザの種類も豊富ですし、これなら飽きずに通えるな、と意外とピザの味を楽しんでいた記憶があります。

 

さて黒猫の様子ですが、私が通うようになってから1週間ほどで、待機場所をピザ屋さんの入口から、私がご飯をあげる裏手へと変えてくれました。

 

 

どうやら頭の良い子のようなので、これなら人馴れするのもそう難しいことではないでしょう。

 

その後、黒猫にご飯をあげるようになってから1か月が経ったころ、私は黒猫のTNRに取り掛かることにしました。

 

まだ1月で寒い時期ではありましたが、発情期を迎える前に手術を済ませた方が黒猫のためにもなります。

 

しかし、この頃の私はまだ今の家へ引っ越しする前で、猫を預かれる環境にはありませんでした。

 

そこで、一緒にTNR活動をしている友人に相談することにしました。

 

私はピザ屋さんの黒猫にご飯をあげるようになった経緯を話し、近いうちにTNRを済ませたいことを伝えました。

 

友人「預かるのはもちろんOKだけど、その黒猫はオス？メス？」

 

私はその言葉を聞いて、初めて黒猫の性別を知らないことに気がつきました。

 

今まで本当にうっかりしていて、黒猫の性別を確認するのを忘れていたのです。

 

いつも夜暗い中でご飯をあげていて、黒猫のお尻の周りが良く見えないため、性別のことまで気が回らなかったのもあります。

 

 

仕方がないので、とりあえず捕獲してから、性別を確認することになりました。

 

そして数日後、私は捕獲機を持っていつもの時間にピザ屋さんへ行き、黒猫が待っているお店の裏手に捕獲機を仕掛けました。

 

最初は捕獲機を怪訝に思っていた黒猫でしたが、しばらくすると無事に捕獲機に入ってくれました。

 

そして、いよいよ黒猫の性別を確認する時がやってきました。

 

果たして、黒猫くんなのか？それとも黒猫ちゃんなのか？

 

私は捕獲機を持ちあげて下から黒猫のお尻を確認すると、メスの黒猫ちゃんだということが分かりました。

 

私と友人はメスを優先してTNRしているので、黒猫がメスだと分かった時は、非常に安堵した気持ちになったのを覚えています。

 

そして、友人の家で3日ほど預かってもらった後、黒猫ちゃんは無事に不妊手術を終えて私の元に帰ってきました。

 

 

夜になってからいつものピザ屋さんの裏手へ行き、キャリーケースを開けてリリースすると、黒猫ちゃんはお店の奥へと走り去っていきました。

 

その時は無事に手術を終えてひと安心でしたが、初めての病院で怖い思いをした黒猫ちゃんがこの後にご飯を食べに戻ってきてくれるか、という点では大いに不安が残りました。

 

私は、翌日からいつも通りに黒猫ちゃんが来るのを祈りながら帰宅しました。

 

（つづく）