3匹の義兄弟猫のお話（その3）

10日ほど行方不明になっていたチャトラは、どこかで去勢手術を受けて駐車場へ帰ってきました。

 

どんな人がチャトラをTNRしてくれたのか分かりませんが、身体が大きくボス級のチャトラを捕獲して去勢手術するのは大変そうですし、私の手には余ったかもしれません。

 

そう考えると、チャトラをTNRしてくれた人は、おそらく私よりも熟練の保護猫活動家なのでしょう。

 

何はともあれ、チャトラが無事だったことに、私はひと安心しました。

 

 

その後、私と友人はトラちゃんとクロちゃんをTNRして、他の現場のTNRにも取り掛かることになりました。

 

この頃は多くの猫をTNRする日々で本当に忙しく過ごしていましたが、保護猫活動に対して理解を深めていく時期でもありました。

 

こうして月日は流れ、2018年の春を迎えた頃のことです。

 

原因不明の病気で、トラちゃんが天国へ旅立ってしまいました。

 

私はトラちゃんを失った悲しみに沈む一方で、クロちゃんの保護を決意しました。

 

トラちゃんとクロちゃんの2匹を保護するという目標を果たせなかった私にとって、クロちゃんだけでも無事に保護したかったからです。

 

それから私は猫が飼える家へ引っ越し、ついにクロちゃんを家へ迎え入れることができました。

 

 

そして、駐車場にはチャトラだけが残りました。

 

駐車場にチャトラだけを残すのは心苦しく感じましたが、クロちゃんと仲が良くないことを考えると、私の家で2匹を一緒に暮らさせるのは不可能です。

 

それに、ボス級の体格で手強そうなチャトラを家猫として迎え入れるのは、猫を飼ったことが無い私にとってはハードルが高く感じられたのです。

 

結果としてチャトラは外猫として暮らし続けることになり、私は今までどおり駐車場に毎日のお世話へ行くことにしました。

 

 

それから時は過ぎていき、夏から秋に季節が移っていく頃のことです。

 

チャトラが1週間ほど姿を見せなくなってしまいました。

 

この頃のチャトラは毎日のようにご飯を食べにきていたので、1週間も姿が見えないのはちょっとした事件です。

 

そして、チャトラを探しに駐車場の周りへ出かけようかと思っていた矢先、ケガをしたチャトラがどこからともなく私の足元にやってきました。

 

最初はチャトラのケガに気付かなかったのですが、いつものように頭を撫でた時に首元が血まみれになっているのが目に入ったのです。

 

 

しかも、かなり深い傷で皮膚がめくれており、裂けた部分からは赤い筋肉が露出していました。

 

チャトラのただならぬ様子を見た私は、全身が震えるような衝撃を受けました。

 

そして、とにかく傷を治すために何とかしないと、という強い焦りを覚えたのです。
 

さらに、ケガをしたチャトラが私のところにやってきたのはきっと助けを求めているはず、という思いが一層と私に焦燥感を与えました。
 

 

私はお店で段ボールをもらい、その中にチャトラを入れて急いで病院へ連れていくことにしました。

 

しかし、段ボールに入ったチャトラが大人しくしているわけがありません。

 

段ボールに入れられたチャトラは突然の出来事でパニックになり、全力で暴れて段ボールを飛び出し駐車場の奥へと走り去ってしまいました。

 

今思えば、洗濯ネットやキャリーケースを使えば良かったものを、どうして段ボールに入れたのか、自分のことながら理解に苦しみます。

 

ただ、この時は一刻も早く病院へ、という気持ちが先行してしまって、最善策を取ることができませんでした。

 

この時は予想外の出来事で気が動転していたとは言え、私が軽率な行動を取ったせいでチャトラの治療が難しくなった、というのは歴然とした事実です。

 

そして、この日を境にして、チャトラは再び姿を消してしまいました。

 

（つづく）