61の温情が降り注いだ猫のお話（その4）

こてつが口の中から出血しているのを見つけた翌日、私は急いでこてつを病院へ連れていきました。

 

今まで多くの猫と関わってきましたが、口の中が真っ赤に染まるほどの出血は初めてだったため、私は緊張しながら先生の診察を見守っていました。

 

気になる診断結果は、こてつの口の中にポリープができていたそうです。

 

そして、口の中から出血していたのは、ポリープが歯に当たって切れていたことが原因でした。

 

先生からポリープと聞かされて悪性の腫瘍を連想した私は、全身から血の気が引く思いでした。

 

まだ幼いこてつが、ポリープによって死と隣り合わせの運命にあることを知り、絶望の淵へと堕とされた気がしたのです。

 

 

こてつにポリープがあると聞き、すっかり落ち込んでしまった私に対して、先生はゆっくりと分かりやすく病状を説明してくれました。

 

・こてつはまだ若いので口の中のポリープは良性の可能性が高いこと。

・こてつは生まれつき歯並びが悪く、食事の時などに自分の口の中を噛んでしまって傷を付けてしまっていること。

・口の中の傷を何度も噛み続けているせいで、傷跡が肥大化してポリープになってしまったこと。

 

ここまで先生に説明してもらって、ようやくこてつのポリープが生命に危険を及ぼすものではないことを理解しました。

 

ただし、ポリープはそれなりに大きくなっているため、切除手術が必要になります。

 

私はその話を聞いて、少し戸惑ってしまいました。

 

もしポリープの切除手術を受ければ、術後の観察や療養に相応の期間が必要になりますので、こてつのリリースは不可能になってしまうからです。

 

しかし、口内にポリープができているこてつを、そのままリリースするわけにはいきません。

 

私はこてつのリリースを断念し、家で保護して里親さんを探すことに決めました。

 

こうして、こてつの手術日程が決まり、それまで家で療養する日々を送りました。

 

 

その後、切除手術の日がやってきました。

 

先生からは比較的安全な手術だと聞かされてはいましたが、やはり一抹の不安は残ります。

 

私はこてつに手術を頑張るように言い聞かせてから、看護師さんにこてつを託しました。

 

その翌日、こてつは無事に手術を終えて退院しました。

 

戻ってきたこてつはエリザベスカラーを付けてはいましたが、元気いっぱいで手術の予後は問題なさそうです。

 

食欲に関しても普段どおりだったので、しばらくは様子見で良さそうでした。

 

 

そして手術から1週間後、切除した腫瘍の病理検査の結果を病院へ受け取りにいく日がやってきました。

 

先生は心配ないと言っていましたが、腫瘍と聞くとどうしても不安が募ってしまいます。

 

私が緊張するなか先生から手渡された病理検査の結果は、無事に良性の腫瘍という診断結果でした。

 

 

この検査結果を見て、私はようやく心から安堵することができました。

 

あとは何回か病院で術後検査を受けて問題なければ、里親さん探しを始められます。

 

こてつが生涯幸せになれるような里親さんを見つけるため、私は決意を新たにしたのでした。

 

（つづく）