支援総額
目標金額 100,000,000円
- 支援者
- 5,245人
- 募集終了日
- 2024年12月2日
特別寄稿:希望のまちを諦めない #2 鈴木晶子さん
「特別寄稿:希望のまちを諦めない」
クラファンのラストスパートとして、抱樸とさまざまな形で関わる皆様に、抱樸にまつわるテーマから、自由な形式でご寄稿いただく企画。今回は認定NPO法人フリースペースたまりば 事務局長・理事の鈴木晶子さんです。ぜひお読みください!

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念仏ばあさんの話
幼少期、私は伊豆七島の神津島で育ちました。精神科医の森川すいめいさんの旅行記『その島のひとたちは、ひとの話をきかない -精神科医、「自殺希少地域」を行く』のタイトルになった島です。そんなわけですから、私はひとの話をきかない島出身の臨床心理士、ということになります。
神津島の面白い習慣に、念仏ばあさんたちによるお葬式があります。荒っぽいうちの島では「お」をつけることもしないで、おばあさんのことを「ばあ」と言いますので、ここでも愛を込めて「ばあ」「ばあら(=おばあさんたち)」と言いたいと思いますが、うちの島では葬式は家人やお坊さんがするものというより、念仏を唱えるばあらが執り行っているように感じています。
元々、小さい頃から法事といえば、家でお坊さんと一緒にばあらが念仏を唱えるものでした。ですから、島を出て、初めて東京の葬祭場でお葬式に出た時には、これが世間の葬式かと、面食らったものです。さらに、大人になってからわが家の「きくえばあ」が亡くなった時、ばあらは念仏を唱えているだけではなく、葬儀の進行の中核を担っているのだと気づきました。
きくえばあは、島ではなく本土の病院で亡くなりました。医療資源に限りのある島です。体調を崩してからはご多分に漏れず島で最後まで診てもらうことはできず、治療のために本土に来ざるをえませんでした。亡くなった後、棺に入れてもらったばあと一緒に親戚と私の家族とで、大型船に乗って島にみんなで帰りました。
棺を載せられる大型船は、東京の湾岸エリアから夜出発し、明け方大島などいくつかの島を経由して、終点の神津島にたどり着きます。10人程度が泊まれる2等船室を貸し切って、棺と一緒に夜を過ごし、朝、神津島に辿り着いて、他のお客さんたちが降り切って、棺に収まったばあと一緒に船を降りるのを待っていました。
すると、数珠を持った2、3人のばあらが船室にやってきました。船室中に塩を撒きまくり、その場で念仏を唱え始めました。あっけに取られる私たちを尻目に、ひとしきりばあらが般若心経を唱えると、いよいよ棺は島に上陸しました。船員さんは慣れているようで、撒かれた塩を気に留める様子もありませんでした。
久しぶりに幼い頃育った家に戻ると、いるはずの家主であるじいは見当たらず、代わりに6、7人のばあらが家に上がり込んで、きくえばあの帰りを待っていました。島で70年以上ともに過ごしてきただろうばあらは、きくえばあの名前を呼びながら泣いています。だいたいのばあは私も覚えている顔でした。
棺を仏壇の前に置くと、泣いていたばあらがシャキッとして、また般若心経を唱え始めました。そうするうちに、小さい頃から世話になっている親戚のじいとばあとおじさんが到着しました。棺の位置やら状態やらを直し、葬式の準備を整えています。しかし、3人の会話は全く噛み合っていません。誰も相手の言ったことをたいして聞いていません。だって、ここはひとの話をきかない島ですから。けれど、相手が自分の話をきいていないことなど気にも留めず、それぞれ勝手なことを喋りながら、なぜか葬式の準備はあい整っていきます。
一旦みんなが帰って行って家に静かさが帰ってきた頃、奥の部屋から涙をポロポロ流しながらじいが出てきました。
「ばあは死んだの?」
二度の脳梗塞を経て、認知症になったじいはまるで子どものように尋ねます。
「そうだね。ばあは死んだんだよね。悲しいね、寂しいね」
そんな声をかけているうちに、葬儀のために、親戚やらばあらやらが集まってきて、わが家のじいはまた部屋に引っ込んでしまいました。部屋を覗くとひとり悲嘆にくれています。
いよいよ島で唯一のお寺からお坊さんもやってきました。ばあらと一緒に念仏を唱える若いお坊さん。途中、きくえばあの人柄や思い出などを交えた説教があるのも、田舎ならではのつながりだなあと思いながら感心しました。
が、とにかく、念仏が長い。でも、長いなんてと言ってはいけません。東京で働いて退職後島に帰ってきていた親戚のおじさんがこっそり教えてくれます。
「この間、うちのじいの葬式で、念仏はショートでお願いします、って言ったら、大ブーイングだったよ」
ここは、家人の意向より、ばあらの進行に従うより他なさそうです。
やっと長い葬儀が終わり、島の外れにある火葬場にみんなで移動します。私の古い記憶とはまるで違う場所にある比較的新しい火葬場でした。そんな小さいながらも整った火葬場で、きくえばあが火葬される間、ばあらはまたひたすら念仏を唱え続けています。
念仏は、さらに続きがありました。翌朝、早朝にお寺のお御堂でお見送りの念仏を唱える習慣があります。眠い目をこすりながら、みんなでお寺に行って念仏が始まるころ、またばあらがやってきます。元々、信心深いこの島では、お墓のお参りや掃除、お花のお水替えなどを毎日する習慣があり、大体それは早朝にばあらが行うものでした。毎日のお参りにきたばあらが、念仏があるとお御堂に上がってきて、また一緒に念仏を唱えてくれます。終わると、後ろに用意されたオールドファッションなエナジードリンクを1本ずつ持って帰っていきます。
こうして、何がどう進んでいくのかもわからないし、肝心の家主のじいは全く姿を見せないまま、ばあらのおかげできくえばあのお見送りが終わったのでした。程なく、1人家に残された認知症のじいは、周りの世話で島で一軒だけある特別養護老人ホームに入れることになりました。
そういえば、念仏を唱えてくれた見覚えあるばあらは懐かしい限りでしたが、思い返してみると可愛がってもらった記憶は特にありません。「アッコちゃん、大きくなったね」と気まぐれに声をかけてきたりしましたが、見守ってもらったような気もしません。けれど、好き勝手喋っているばあらはだいたいおおらかで、何をしてどこで遊んでいようが怒られた記憶もありません。だってここは、ひとの話をきかない島ですから。それでも、昔は本土からの連絡便が月に1回しか来なかったという絶海の孤島です。人が集まるといいことばかりではない中で、助け合わずには生きていけない場所での人間関係の最適解が、神津島では「ひとの話をきかない」だったのではないかと思っています。そんな神津島が自殺希少地域なのです。
さて、抱樸の奥田さんは、互助会のみんなで葬儀を出すことを「赤の他人が葬式を出す」と言います。でも、ばあらも親戚も「赤の他人」ではありません。島でともに生きている「拡大家族」です。きっとこれが希望のまちの言う「なんちゃって家族」なんだろうと、この島で育った私は思っています。わかりやすく仲良くなくたっていい。1人になりたい時は、外にいる人たちを感じながら部屋にこもったって良い。みんながお互いを知っていて、何かあったら寄ってたかってなんとかしてくれる。それが「孤立しない繋がり」ではないでしょうか。
「希望のまち」が成功したら、小さな離島ではなく、「なんちゃって家族」が北九州という100万人都市に広がっていくことになります。「身寄り問題」もなんのその。
毎日わちゃわちゃと、いいことも、面倒なことも起こりながら、みんなで笑って、話なんて聞いていないようで、必要な時にはお互い助け合う、そんなまちが誕生するのだろうと思います。その日を心待ちにしています。
リターン
1,000円+システム利用料
希望のまち応援コース|1千円
■お礼のメール
■希望のまち特設WEBページにてお名前の掲載
(*ご希望者のみ。ご支援から2か月以内の掲載を予定しています)
■希望のまち活動報告書
(*2025年2月までにメールにてお送りします)
■寄付金領収書の発送
※ 個人によるご寄付で「寄付金控除」を受けるためには、年間2,000円を超える寄付が必要です。
※ご支援の際はページ本文末尾記載のご注意事項を必ずご確認ください。
- 申込数
- 967
- 在庫数
- 制限なし
- 発送完了予定月
- 2025年2月
3,000円+システム利用料
希望のまち応援コース|3千円
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- 申込数
- 1,043
- 在庫数
- 制限なし
- 発送完了予定月
- 2025年2月
1,000円+システム利用料
希望のまち応援コース|1千円
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3,000円+システム利用料
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- 2025年2月

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