メンバーからの一言（１） ー耐震補強への取り組みー

皆様、ご支援頂き誠にありがとうございます。本プロジェクトの共同研究者の毛利建築設計事務所の今井弘と申します。

私自身、2001年のインドブジ地震以降、2003年イランバム地震、2005年パキスタン北部地震、2006年インドネシアジャワ島中部地震での住宅復興に携わり、現在は2015年のネパール地震の復興庁のテクニカルワーキンググループの一員として活動しています。人的被害の軽減に向けて、現地で普及しうるローコストの耐震補強技術の開発が喫緊の課題です。

今回のネパール地震で大きな被害を受けたのは、地方の峻険な山岳地域で、セメントの搬入も困難な地域でした。ネパールのセメント袋は50㎏であり、小さな住宅でも建設するには100袋以上必要になります。車でアクセス出来るところは限られており、1日、2日と歩かなければいけない村に多くの人が住んでいます。

そこでネパールでも道路沿いで良く目にする蛇籠を、建物の耐震補強に転用する技術の開発に取り組み始めました。ネパールでは既に何十年と使用されており、人々にもなじみ深い材料です。ワイヤー（針金）をロール状で運搬し、現地で手作業でメッシュ状に編みこめるため、山岳地域での採用が可能です。この蛇籠工法は、中の組積体（石）が変形してから効果がでるため、構造解析等での分析が非常に難しいものです。よって今回の実大振動台実験は、地震時の建物の挙動を把握すること、蛇籠の効果を検証するものとして、非常に重要な実験研究となります。

開発途上国の庶民住宅、特に組積造は、これまで研究者、エンジニアの対象となってきませんでした。今回の実験を通して一般住宅の耐震性向上、そして自然災害からの人的被害軽減に貢献できることを願っています。