地域の宝をみんなで守る|文化財防災・救援プロジェクト2025
地域の宝をみんなで守る|文化財防災・救援プロジェクト2025

寄付総額

7,626,000

目標金額 5,000,000円

寄付者
327人
募集終了日
2025年6月9日

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2025年04月21日 12:00

コラム③ 被災した紙資料を救う

東日本大震災では大きな地震により巨大な津波が発生し、東北地方の沿岸部に襲いかかりました。

 

この津波により地域で大切にしてきた多くのものが流失したり、ずぶ濡れになるなどの被害が出ました。被害を受けたものの中には多くの古文書等の紙資料がありました。

 

紙は濡れたままの状態にあると腐っていきます。また、生乾きの状態でもカビが生えてしまいます。濡れた紙資料はできるだけ早く回収して乾燥した状態にするのがベストです。

 

しかし、おびただしい量の紙資料が津波の被害を受けており、乾燥には相当の人手と時間を要することから、とても、できるだけ早く、という状況ではなかったのです。

 

 

 

東日本大震災に限らず、それまでも豪雨などで大量の紙資料が水濡れになることがありました。

 

そのような時に行われていたのが真空凍結乾燥法による乾燥です。

 

紙資料は長い年月の間に紙同士がくっついてしまっているものも少なくなく、また、紙そのものがすでに傷んでいることもあります。そのような紙資料が水濡れした後、そのまま乾燥してしまうとくっついたままになってしまうことがあります。

 

真空凍結乾燥法はこの乾燥による紙の固着を回避するのにも有効な方法なのです。

 

 

 

東日本大震災で水濡れの被害を受けた大量の紙資料をいかに乾燥した状態にするか、課題は2つありました。

 

ひとつは水濡れ状態の紙資料が腐ったりカビが生えたりすることを一時的に防ぐための冷凍保管と、もうひとつはその後の乾燥法です。

 

乾燥法については、上述の真空凍結乾燥法に加え、冷凍保管していた古文書を解凍して丁寧に乾燥させていく方法がいくつかあります。

 

真空凍結乾燥法は真空凍結乾燥機の中にたくさんの水濡れの紙資料を入れて乾燥させることができます。水濡れの紙資料を乾燥させるための真空凍結乾燥機を調達できれば有効な乾燥法として使えることが期待できるわけです。

 

実は、真空凍結乾燥機は日本の各地の教育委員会や埋蔵文化財センターにありました。

 

遺跡を発掘するとたくさんの木製遺物が出土します。この木製遺物を良好な状態で乾燥させる方法のひとつに真空凍結乾燥法があり、真空凍結乾燥機が設置されている多くの機関があるのです。

 

特に、奈良文化財研究所の大型真空凍結乾燥機は一度に2トンの水濡れの紙資料を乾燥させることができるものです。

 

奈良文化財研究所の大型真空凍結乾燥機

 

奈良文化財研究所では、東日本大震災発災直後に全国の自治体や埋蔵文化財センターに真空凍結乾燥機の有無と使用の可否について照会をかけました。

 

真空凍結乾燥機の大きさは別にして、真空凍結乾燥機を保有し使用可である機関が手をあげてくれました。これでひとつの懸念材料であった真空凍結乾燥機の調達は可能となったのです。

 

 

 

しかしながら、もう一つの大きな課題である冷凍保管の問題が解決できていませんでした。そんな状況の中、朝日新聞の記者が奈良文化財研究所に取材に訪れました。

 

当時、奈良文化財研究所の埋蔵文化財センター保存修復科学研究室の室長であった私は、その取材の中で大量の紙資料を乾燥させるための真空凍結乾燥機の調達はできているけれども、水濡れの紙資料がカビたり腐ったりすることを一時的に防ぐための冷凍庫がないということを訴えました。

 

もちろん、日本全国に冷凍倉庫はあるのですが、その大半は食品を保管するための冷凍倉庫であり、津波で水濡れし、カビが生え始めている古文書を受け入れてくれるところはなかなか見つからなかったのです。

 

 

 

この朝日新聞の朝刊に目を止めた方がいらっしゃいました。奈良市場冷蔵株式会社の方です。

 

奈良市場冷蔵株式会社は奈良県大和郡山市にある奈良県中央卸売市場の中にある冷凍倉庫の会社です。この記事を読まれた社員の方が、上司に、私たちの冷凍倉庫が役に立つのではないか、と進言されたのです。

 

すぐに奈良市場冷蔵株式会社の事業所の所長さんが奈良文化財研究所に来所され、打合せを行いました。懸念されることは食品を入れる冷凍倉庫にカビが生えているかもしれない紙資料を入れることが果たして可能なのかということでした。

 

所長さん曰く、-15℃以下であれば菌やバクテリアの活動は抑えられるとのことでした。

 

所長さんから出された条件はたったひとつ。水濡れの古文書をビニール袋に入れて密封してにおいがしないこと、というものでした。これは、被災現場で作業される方にとって大変わかりやすい作業基準になります。

 

また、奈良市場冷蔵株式会社は物流のネットワークも当然もっておられます。被災地から冷凍保管の要請を受け、被災地の住所とおおよその量を奈良市場冷蔵株式会社に連絡すると、奈良市場冷蔵株式会社ではトラックを手配して奈良まで搬送していただけることになりました。

 

被災地での水濡れ状態の紙資料のトラックへの積み込み

 

かくして、冷凍保管と真空凍結乾燥法による水濡れの古文書の乾燥が実現したのです。

 

 

 

次に立ちはだかる問題は、津波の泥やカビ等をクリーニングするというものです。これには、NPO法人書物の歴史と保存修復に関する研究会(書物研)の皆さんの献身的なご協力をいただきました。

 

書物研による古文書のクリーニング作業

 

奈良文化財研究所で真空凍結乾燥した大量の紙資料を書物研ならではの工夫と技術でクリーニングを施し、所有者の方々へお返しすることができたのです。

 

 

 

今回ご紹介した、災害により水濡れになった紙資料の回収、冷凍保管、乾燥、クリーニングという一連の流れは、熊本地震、西日本豪雨、能登半島地震、能登半島水害などの災害後においても取り組まれており、現在、ひとつの対処法として確立しています。

 

この一連の作業が発災直後に迅速に行われるならば、被災後の紙資料の劣化を防ぐことが可能となります。

 

このような水濡れの紙資料の発災直後のレスキュー活動は、極めて重要なものとなっています。

 

 

 

今後とも、皆様のお力添えを賜りますよう、お願い申し上げます。

 

高妻洋成(文化財防災センター センター長)

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