プロジェクトメンバーから皆様へ Vol.5

たくさんのご支援を賜り、誠にありがとうございます。

人は何を求めて音楽を聴くのでしょうか。

癒やしを求めて、希望、明日への活力を求めて。沈んだ心を癒やしてくれるのも音楽の大きな力ですが、時に音楽は凶暴にもなります。深い苦しみ、憎悪、不安、戦争の恐ろしさ。見たくないもの、受け入れたくないもの、現実世界では経験したことのない感情をも、時代も国も越えて心に直接問いかけてきます。

私達が奏でる音には言葉がありません。
ですが、音には感情が意志があります。
その根源は、演奏家が何を感じたのか、とてもシンプルなものです。

明るく幸せに聞こえた音が、別の人には辛く悲しい音と響く。そんな懐の深さ、あらゆる感情を内包してしまう音という魔力に私達は魅了されています。

少し前には想像もしなかった世界が目の前にある今、全ての人が多くの困難に直面し、そして乗り越えようと必死にあがいています。試練は私達を強く大きくしてくれるはずです。

バッハの持つ神々しさ、モーツァルトの持つ美しさ、ベートーヴェンの持つ強靭さは、音楽の世界にしか存在しないものなのかもしれません。だからこそ、私達には音楽が必要なのだと。

偉人が託した音符という言葉のないメッセージを、今この時代を共有する皆さんと共に分かち合いたい。

混乱の夜が明け、ホールでお会いできる日を楽しみにしています。

クラリネット: 持丸秀一郎、吉岡奏絵