小原佐衣子先生による重症トリカブト中毒の症例報告がWJCCに掲載されました！

トリカブトは夏から秋にかけて野山で青や紫の美しい花を咲かせます。

ところが、全草、とりわけ根に高濃度のアコニチン類を含有しています。アコニチン類は心筋や神経などの興奮性組織の細胞膜にある電位依存性ナトリウム・チャネルに作用して心毒性や神経毒性を発揮します。

災害医療センター救命救急センターの救急医であり、埼玉医科大学医学部臨床中毒学の大学院生である小原佐衣子先生は、トリカブトの根を食べて難治性の心室性不整脈および急性循環不全が生じた若い男性患者さんを経験しました。患者さんはVA-ECMOによる心肺補助を施行されたところ、9時間後には心電図は洞調律に戻り、最終的に後遺症なく退院しました。この症例については日本臨床・分析中毒学会（J’s-CAT）の薬毒物分析ネットワークを介して、食べ残しのトリカブトの根は埼玉県衛生研究所で、血清は昭和大学薬学部毒物学部門で薬毒物分析が施行され、根からはアコニチンとメサコニチンが、血清からアコニチンが検出されました。このように致死的なトリカブト中毒であっても、VA-ECMOで心肺補助され、アコニチン類の代謝を待てば救命可能です。この症例について私の指導下で英文で症例報告を作成したところ見事にWorld Journal of Clinical Cases（WJCC）に掲載されました。