支援総額
目標金額 610,000円
- 支援者
- 61人
- 募集終了日
- 2015年11月27日
「星影のワルツ」千昌夫
震災後(2011年4月~7月)の被災地ではラーメン屋くらいしか選択しがない状態が続いた、と前述しました。おかげで昼も夜もラーメンという日もあり、非常時なのだから食べられるだけありがたいと思え!感謝の気持ちを持て!と厳しく自分に言い聞かせていても、やはり心のどこかで少々ウンザリしていました。徐々に季節は春から夏へと移り、そんなラーメン屋でも冷やし中華や他の定食メニューなども増えてきたので、幾分ほっとしておりましたが、同行しているスタッフと一緒に食べる際に気になることがありました。
すっとんきょうの弟子Yです。実際の活動では的確なアシストと高度な演奏力、物怖じせずに初対面の人にも接することが出来る性格は非常にありがたく、重宝していましたが、予想できないところで驚くような言動が出てくるので、あちこちで物議をかもしだすこともしばしばありました。
「このラーメン屋はまだ入ったこと無いね」
毎週、あちこちのラーメン屋を渡り歩いていた我々は、とにかく新しく見つけた店には無条件で入るくせがついていました。この日に入ったラーメン屋は正直、味はそれほどでも無かったのですが、作っているご主人の愛想がよく話し好きだったので、時間つぶしには良い場所でした。さて、そろそろ帰りましょうか‥と席を立とうとした時、弟子Yが店のご主人に
「あの、壁際に飾ってある古い写真は、ここの創業者ですか?」
と質問しました。
「ご主人に顔が似てますよね、ご先祖か何かでしょうか」
それを聞いた私と店のご主人は思わず顔を見合わせて、黙りこんでしまいました。店の壁際に飾ってあったのは、東北地方では有名な実在の福の神、仙臺四郎だったのです。私は大慌てで弟子Yを外に連れ出して、写真の説明をしました。
また、弟子Yは我々(私とアシスタントなすちゃん)の男性チームと比べて、体が小さく、一回の食事量も遥かに少なかったことから、ラーメン屋で出てくる定食は負担だったようで、ある程度箸を進めてから頻繁に
「すいません、多いので残します」
と言いました。私は出来れば、被災地という場所で被災した人々が困窮している時期に、支援に来た我々が食事を残すのはあまり良いことには思えず(かと言って無理に全部平らげろ、というのも無茶な話なので)
「最初に注文する時に、店の人に量を減らしてもらえばいいのではないかな」
と提案したのですが
「それは‥嫌です。何か損している感じがするから」
そう言って弟子Yは
「智田さんかなすちゃん、私の分食べてください」
と余った分を寄越そうとするので、結局ドカンと私が怒って話が終わりになりました。今となっては笑い話ですが。
この時期の避難所は食糧の配給事情が徐々に改善していたとは言え、場所によっては三食全て同じ弁当屋から届けられて、揚げ物ばかりで疲れる‥と言った声も聞いていました。また、避難所では飲酒に関するルールも厳しく決められていました。アルコールで泥酔した人が同じ空間で暮らす人々に迷惑行為をはたらくケースもあり、持ち込みも実際の飲酒も禁止されていたのです。
そんなある日、我々が山田町の避難所に訪問した際に、たくさんいるはずの人々が殆ど出かけていて、閑散としていたことがありました。入り口で受付の当番をしていた若者に話を聞くと、同じ敷地内にある公民館で支援団体による食事の振る舞いやイベントが開催されていて、いつもの食事に飽き飽きしていた皆さんが出払っていたとのことでした。壁にイベントのチラシが貼ってあり、それを見たら
「ワインの振る舞いもあります」
との一文が。ワイン?避難所で?我々は驚きました。イベントの参加者は我々の活動が開始されると、公民館から三々五々戻ってきて、命名の場所に座り始めましたが、その中に明らかに千鳥足の集団がいました。一人は片手に半分ほど中身が入った酒瓶を持っています。私は心配になりながらも、用意してきた歌を提示して、参加者と一緒に歌い始めました。すると、酩酊した男性が突然大声で
「おい、星影のワルツを弾け!俺が踊ってやるから!ほれ、早く!」
と叫びました。私が他の参加者に配慮しつつ、穏やかにその要求を受け入れようとすると、彼はふらふらしながら前に出てきて、おぼつかない音程で歌いながら
「ほれ、お前らも踊れよ!辛気臭い顔してないで、踊れ!」
とさらに声を荒げました。
「いい加減にしろ!酔っぱらいが!」
今度は背後から別の怒号が響きました。振り返ると、さっき入り口にいた若者が真っ赤な顔をして泥酔した一群に向かい、詰め寄りました。
「迷惑なんだよ、てめえ!ぶっ殺すぞ!!」
あまりの気迫に、さっきまで威勢のよかった酔っぱらいたちは黙りこみ、そのまま憮然とした表情で外へ出て行きました。場内はしん、と静まり返り、涙ぐむ女性の姿も見えました。私は気を取り直して、他の曲を幾つか弾き歌い、何とかいつも通り体操やゲームなどを行って、一時間の活動をやり過ごしました。
終了後、避難所の責任者である年配の男性から
「済まないことをしたね」
と謝罪され、私は全然平気ですよ、気にしてませんよ。それより大丈夫でしょうか‥あんなことがあって‥と聞きました。
「あの酔っ払っていた男性も、普段はとても穏やかで良い人なんです。元々漁師なんですが、船も何もかも津波で失って、意気消沈していたんですよ。まさかイベントで飲み放題があるとは私も思いませんでした」
責任者の男性が、帰りにこれを食べていってください、と避難所に配給された弁当の残りを我々に渡そうとしましたが、丁重にお断りをして家路につきました。
帰りの車中、弟子Yに
「毎回、ラーメン屋や定食で食べるのが大変だったら、自分の食べられる量だけコンビニで買って食うというのはどうなの?」
と聞きましたところ
「コンビニだとちゃんとした食事じゃないから、嫌です」
と言われました。そーですか。
リターン
3,000円

①お礼状(ポストカード)
- 申込数
- 34
- 在庫数
- 制限なし
- 発送完了予定月
- 2016年2月
10,000円

①お礼状(ポストカード)
②写真集1冊
③当法人ホームページへお名前の記載
(掲載を希望されない場合はご連絡下さい)
- 申込数
- 20
- 在庫数
- 制限なし
- 発送完了予定月
- 2016年2月
3,000円

①お礼状(ポストカード)
- 申込数
- 34
- 在庫数
- 制限なし
- 発送完了予定月
- 2016年2月
10,000円

①お礼状(ポストカード)
②写真集1冊
③当法人ホームページへお名前の記載
(掲載を希望されない場合はご連絡下さい)
- 申込数
- 20
- 在庫数
- 制限なし
- 発送完了予定月
- 2016年2月

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