福井敬さんを応援します⑦　深作健太（演出家）

福井さんは、僕のヘルデン

演出家　深作健太

 

　福井さんの歌声にはじめて生で触れたのは1997年、新国立劇場のオープニング公演でした。圧倒的な優しさと勇ましさを両立させる白鳥の騎士ローエングリンに観客席で胸を打たれて以来、福井さんは僕にとって、心のヘルデン（英雄）となったのです。

 

　2015年、ついに夢が叶って《ダナエの愛》でオペラ演出家としてデビューさせていただいた時、福井さんはいつも穏やかな人柄で、稽古場のムードを支えて下さり、オペラを作る喜びを身をもって教えて下さいました。以来、福井さんは僕にとって、心のマエストロ（師匠）ともなったのです。

 

　

　2018年、二本目のオペラ演出作は《ローエングリン》。指揮の準メルクルさんと次の演目を話し合っていた時、僕の頭の中には福井さんのあの歌声をもう一度聴きたいという思いがずっとあったのです。まさかその夢が実現して、なんと二十年ぶりに、福井さんが白鳥の騎士を歌われて、その貴重な現場を、まさかご一緒できたなんて！本番中、僕は客席で、もうダラダラと滂沱の涙を垂れ流しておりました。

 

　そして2020年、ベートーヴェン生誕二百五十周年となる今年、三本目のオペラ《フィデリオ》でも、福井さんとご一緒させていただく予定です。つくづく演出家冥利に尽きると思います。なんだか僕の方が温かく見守っていただき、育てていただいているような。これからもずっとご一緒させていただきたい、福井さんは僕にとって、まさに永遠のスーパースターなのです。

 

　そんな福井さんがついに、京都市交響楽団とご一緒に、オペラ・アリア集を制作されるといいます。これは聴きたい！しかも録音見学やリサイタル招待、さらには福井さんご自身が出張して、皆さんのためだけに歌ってくれる特別なリターンまであるといいます。まさに至福の喜び！オペラはやはり永遠のライブ芸術です。〈劇場〉という非日常の空間へ出かけていただき、国境や文化を越えて、400年以上の長きに渡り歌い継がれて来た歴史の一端に、ぜひ皆さんも生で参加してみて下さい。僕も参加します！

 

 

深作健太プロフィール

1972（昭和47）年、東京都生まれ。成城大学文芸学部卒業。

2000年、父・深作欣二と共に脚本・プロデューサーとして映画『バトル・ロワイアル』を制作、2003年、撮影中に逝去した父の跡を継ぎ『バトル・ロワイアルⅡ【鎮魂歌】』で監督デビュー。第58回毎日映画コンクール脚本賞受賞。

以来、演劇やTVドラマなど、多彩なジャンルを演出している。

代表作に、映画『同じ月を見ている』、『僕たちは世界を変えることができない。』、演劇『罠』、『里見八犬伝』、『TABU』、『スルース～探偵～』、『暗くなるまで待って』など。

2015年、東京二期会《ダナエの愛》で念願のオペラ演出家デビュー。

2018年、好評を博した《ローエングリン》に続き、2020年9月《フィデリオ》を演出予定。