女性たちが知識や気づきを共有し声を上げられるように！

こんにちは！私はオミー・ナヒダ、国際的な開発NGO「クリスチャン・エイド」のバングラデシュ事務所で、ジェンダーとインクルージョン（多様な個性を認め合い一体となる組織づくり）を担うプログラム・オフィサーとして働いています。

 

 

今、バングラデシュのフェアトレード生産者団体のネットワーク組織（ECOTA）と共に、女性のエンパワメントを目指す研修プログラムに取り組んでいます。

なぜ女性のエンパワメントが社会の発展に大切なのか？ ぜひみなさんに、クリスチャン・エイドが関わった素敵な事例をご紹介したいと思います。

それは、ジェナイダというバングラデシュ南部の農村での、伝統的な手工芸品のスキルをもつ女性たちのお話です。ジェナイダには、まちづくりの計画に活発に参加する女性たちのグループがありました。団結してさまざまな活動をしていましたが、仕事の機会は少なく家庭の収入は低いままでした。

 

そこでクリスチャン・エイドは、この女性グループの力を活かし、共同で起業して収入の向上につなげられないかと可能性を探りました。バングラデシュのフェアトレード企業で手工芸品の職人グループの商品を扱う「プロクリティ」と彼女たちを繋ぎ、伝統的な刺繍の技術と現代の技術を組み合わせたデザイン性の高い商品を考えてサンプルをたくさんつくりました。そのうちいくつかがとても優れていると評価され、プロクリティを通じて注文を受けることができました。初めての製品が無事に売れて販路ができると、彼女たちはさらに伝統刺繍を活かした新商品を開発し、仕事の早さが評判を呼んで大手企業からもたくさんの注文を受けるようになりました。

このプロジェクトのアプローチは、女性の潜在能力を引き出す成功体験として、私たちの中に刻まれました。今、この（コロナウイルスの感染拡大による）パンデミックで男性が職を失っている中でも、彼女たちは手工芸品の生産から十分な収入を得て家計を支えています。このことで女性たちは、将来も事業を発展させられるという自信を深めています。彼女たちがつくった製品が売れるに従い、夫やほかの家族も彼女たちの仕事に敬意を払うようになりました。

このプロジェクトは、低所得家庭の女性たちが手工芸品とともに自身の人生を織りなし、誇りと笑顔と幸せをもたらすことができると私たちが確信した、長いプロセスの物語なのです。

 

バングラデシュでは、すべての産業において働く女性は厳しい状況に置かれており、セクシャルハラスメントなどの差別を受けたり、産休などの福利厚生を雇い主が拒否するといった事例が報告されています。

実はこの問題は、今から12年前の2009年から明らかになっていました。

国際的な開発NGOの連盟「アクション・エイド」が同年に行った調査で、バングラデシュの衣料品産業で働く女性の80%が職場に暴力やハラスメントがあると証言しました。他にも教育現場での差別などの実態が次々と報告されたことを受け、バングラデシュの女性弁護士協会が、セクシャルハラスメントを防止するための立法を求めて裁判に訴えました。最高裁判所は、セクシャルハラスメント防止のガイドラインを示し、専門委員会の設置を命じたのです。

ところが、この12年間、ガイドラインを実行に移す適切な行動はほとんど取られていません。開発NGO「BRAC」は、公共交通機関でハラスメントを受けたことのある女性が93%にも上るという調査結果を発表しています。中小企業や零細な職人グループの労働環境については、調査さえ行われておらず実態が見えないままです。

今回企画している研修プログラムは、バングラデシュの女性たちが知識や気づきを共有し声を上げられるようにエンパワーし、女性たちが置かれている状況を把握するためにとても重要です。

この研修プログラムを通じて、性別や職位に関わらずすべての人が女性差別をなくすことを当然のことと認識し、手工芸職人、特に女性たちの人生に変化をもたらすことが、社会の変革につながると期待しています。

 

オミー・ナヒダ
クリスチャン・エイド バングラデシュ事務所
プログラム・オフィサー