歯限局型の早期発見に対する意義について

　昨日は、歯科領域から見つかる HPP 症例のお話をいたしました。これまでに、歯にしか症状が出ていない「歯限局型」を早期に見つける意義はあるのかと聞かれたことがあります。そこで、今日は歯限局型であっても早期発見が重要である理由についてご説明したいと思います。

　まず第１点目は、成長とともに全身の症状が出てくる人がおられますので、先に診断がついていると対処がスムーズになるという点です。これまでは、全身の症状が出てから見つかるパターンが多かったのですが、医科領域には多くの病気がありますので、なかなかこの病気の診断に至らないというケースがありました。ただ、多くのケースで共通しているのは、「そういえば、乳歯が早く抜けていた」と思い出されることです。そこで、乳歯の早期脱落が生じた時点で先に診断をつけておこうという考え方です。

　２点目は、これまで教科書には「乳歯の早期脱落」としか書いていませんでしたが、永久歯にも影響があることが分かってきたという点です。乳歯は生え変わりますが、永久歯は抜け落ちますと次はありません。HPP の患者さんでは歯と骨の接着が悪いですので、歯周ポケットが深くなってしまい、汚れがたまりやすく取れにくくなり、歯周病が悪化しやすい状況です。これまでは、歯磨きや歯周病の治療を頑張っても、なぜかよくならないという状況だったと思います。しかし、もともと歯と骨の接着が弱いことが原因ですので、そのことを十分知った上で対処する必要があります。

　このように、歯限局型は「歯だけで全身に関係しないからいいんじゃないの？」というご質問には、「そうではなく、主に２つの理由があります。」とお答えするようにしています。そして、HPP を熟知している小児科医と小児歯科医とで管理していくことの重要性を理解していただいています。