Episode05【テーマ1 変わる景色に光を当てる】

《静脈街区》の舞台となる空き家の中には、現在進行形で変わろうとしているものがあります。

例えば、黄色い柱が一際目を引く「旧さいとう化粧品店」。本庄デパートメントがリノベーションを手掛けているこの建物は、次の事業者に貸し出すべく、急ピッチで片付け作業が行われています。

再生に向けて急速に変化する建物の様子は、本庄デパートメントのSNSなどで発信されていますが、そのアカウントを知らない人々に知られることはありません。一般に、「空き家再生」において重要視されるのは再生された後の姿であって、再生に向けた作業はひっそりと進行していきます。

街の記憶は時代と共に「上書き」されるものなのです。

我々は、そんな気づかれざる変化に光を当てたいと思っています。そうすることで、この街の歴史を紡いできた建物の有終の美を飾りたいのです。建物のかつての面影が失われる前に、この街に住む人々に周知し、そして新たな役割へと繋いでいかなくてはなりません。

そこで、我々は建物を芸術作品とすることで、変化しようとする建物の断面を人々に開き、見せることができるのではないかと考えました。もちろん、建物をただ開放するだけでも、見せることは可能ですが、訪れた人々に意識して目を向けてもらうことは難しいでしょう。「見られる存在」としての役割を持つ芸術の力を借りることで、普段なら見逃してしまうような建物の細部も、見られるかもしれません。そしてその景色は、芸術鑑賞という体験価値により、ただ建物を見るよりも格段に強い印象と共に、人々の脳に記憶されると確信しています。

我々はアートの力で、変わる景色に光を当てます。