「絵になる町」の土塀

こんにちは！

 

奈良ではここ数日急に冷え込むようになってきました。

 

皆様いかがお過ごしでしょうか？

 

今回は皆様に、藤間家住宅の土塀がある奈良市高畑町の歴史をご紹介したいと思います。

※今さらですが「たかはたちょう」ではなく「たかばたけちょう」です…！

 

高畑町があるのは奈良市の東部。昔、神さまが鹿島からこの地に、白い鹿の背に乗って2人の従者と共に来られたと伝わっています。神さまが降り立った御笠山（みかさやま）のふもとに春日大社が建てられ、そこから伸びる3つの小径から放射状に広がっていったのが高畑町。代々神職の家柄の人々が多く暮らしていました。藤間家住宅が建てられた江戸時代には、春日大社の神事を司る社家、補佐役の禰宜家（ねぎけ）、生活のための八百屋や酒屋など、多くの家々が立ち並び栄えていたそうです。

 

しかしそんな高畑町にも変化の波が訪れます。明治時代の神社改革で神職の世襲制が廃止され多くが離散していく傍ら、広い敷地と豊かな佇まいを持つ残された街並みの趣に魅かれ、文化人たちが集まり出すのです。大正から昭和にかけて「高畑サロン」が形成され、志賀直哉や武者小路実篤などの文学者達と、浜田葆光や山下繁雄など画家達が交流し、彼らの芸術や歴史研究は、文化発信地として高畑の存在を全国に広めることに繋がりました。彼らの活動は志賀直哉が高畑を去る昭和13年頃まで活発に続き、文化人達が去った後も、美しい土塀のある街並みは「絵描きの町」の風景として、今でもスケッチに訪れる人々が後を絶ちません。

 

藤間家住宅は、神官の時代と文化人の時代、2つのアイデンティティが刻まれた高畑最後の建築物です。そして往年の土塀を残すことは、そんな歴史を未来に残していくことでもあるのです！