【興津・坐漁荘と最後の元老・西園寺公望氏の平和外交】

【興津・坐漁荘と最後の元老・西園寺公望氏の平和外交】

水口屋旅館の勝間別荘で避寒の為に滞在する事が多くなり、大正5年(1916年)ついに別荘を建てました。

駿河に移り住む事になる偉人のお決まりで、この時も東海道を辿り京都から職人を呼び寄せ、京風数寄屋造り2階建で外壁には檜の皮が葺かれ小料理屋と間違えてしまうような瀟洒な造りでした。

別荘の名前は『坐漁荘』。中国の故事、太公望呂尚の『茅に坐して漁した』にちなみ、平和な余生を願っての意味を込めて名付けました。

坐漁荘では、一年の四分の三を過ごし、四分の一は避暑の為、御殿場の別荘へ、政治的な用がある時のみ東京の本邸に行きました。

しかし、別荘の名前のようなのんびりとした隠居生活とは裏腹に、西園寺氏は多忙でした。

田中義一、若槻礼次郎、近衛文麿と後に首相を務める閣僚も政治運営を相談するため、坐漁荘を頻繁に訪ねました。世間はその光景を「興津詣で」「西園寺参り」と呼び、興津は有名になりました。

老齢の西園寺氏は身の回りを世話してくれる執事を探していました。

興津に所在した農商務省農事試験場園芸部の元場長で米国ワシントンD.C.ポトマック湖畔に寄贈した桜を"命がけで育て寄贈した"、農業技師・熊谷八十三が執事として選ばれました。

戦争回避に奔走する西園寺公望氏は、熊谷八十三氏が適任だと考えていたのでしょう。

しかし、暗殺から逃れる為に廊下は"鶯張りに五・一五事件後には鉄筋コンクリート造りの書庫を建設し"最後の元老"も寄る年波には勝てず、この地に住み始めた頃には『万事如意』の書を作成したが、この頃には『所憂非我力（憂うる所はわが力にあらず）』の書を作成した。

最後に老公は、つぶやいた。

「一体どこへこの国を持って行くのや」


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