＜体験談②＞　善き隣人として、懐かしい思い出を辿る

認知症の進んだ方に寄り添わせていただくことが多くなりました。認知症と言っても症状はさまざまですが、昔の出来事の記憶は残っていることが多いようです。

もう2年半もの間、毎週通わせていただいている施設にお住まいの男性は、比較的お元気ですが、認知症が少しずつ進んでいます。

当初、ご家族にかつてのお仕事やお住いをうかがい、お借りした家族写真をお見せして、お話を聴かせていただこうと思ったのですが、あまり会話が進みません。

気を取り直し、さらに昔の幼い頃の記憶を辿ろうと思い、ご家族に出生地をお聞きしました。

あまり知らない場所でしたが、今はネット検索でさまざまな情報が入ってきます。

訪問の前に予習をして、故郷を思い出せるように写真も準備して施設を訪ねました。

そうすると、それまであまり会話が進まなかった男性は、故郷の思い出をいろいろ語ってくださいました。その地域で語り継がれる逸話やことわざに触れることもできました。

日本海側の雪の多い景色の写真を見て、「弁当忘れても傘忘れるな！」と大きな声で笑いながら語られる様子に、たくさんの思い出が心によみがえっているようでした。