世界で活用・研究されているトーキングマット

　　

  トーキングマットの基礎研修を受講するため、昨年6月にスコットランドを訪問しました。色とりどりのピンが付された世界地図がまず目にとまり,トーキングマットが活用されている地点との説明を受け、世界の様々な国への広がりを知りました。

  訪問中に、オーストラリア・キャンベラ大学のエリザベス・クラーク先生の研究発表を聴講しましたので概略をご紹介します。クラーク先生は、トーキングマットの効果的な活用方法を研究するとともに、言語療法の講師としてケースマネージャーを含む保健医療・社会福祉の専門職をはじめ司法関係者その他の方々にも、コミュニケーションに困難を抱えるクライエントとの面談におけるトーキングマットの実践的な活用法を指導しているそうです。

　コミュニケーション支援ツールとして、トーキングマットのストレングスを次のように述べておられました。

■シンプルで効果的

■コミュニケーションが困難な人の、自分自身を知る権利（epistemic right）を尊重すること

■トピックを可視化、具体化した「実物」であるオプションカード

■カードを使った問いかけには必ず応答があること

■相手の思いを引き出す聞き手の役割

■視線をマットに向けられるので、対面でのやり取りを苦手にする人が利用しやすいこと

　　一方、トーキングマットは一見すると簡単に見えるけれども、使い方は奥が深いとも述べていました。そのため「質問-答え」の一連の流れとして会話を分析し、カードを受け取った人が、聞き手の問いかけに応答しながらマットにカードを置くまでの積極的な関わり（エンゲージメント）をどのように確認するか、また、それをを維持する方法を研究しているとのことです。

　トーキングマットの効果や活用方法については、スターリング大学のみならず各地で研究されており、多くの論文（英文）が公開されています。その一部はこちらからご覧いただけます。

https://www.talkingmats.com/peoples-research/

 

執筆者　一般社団法人　意思決定支援ネットワーク（SDM-Japan) 副代表　小杉弘子