100通りミュージカルの始まり（100通りのBackstage Vol.1)

私たちが初めて舞台に立ったのは、2012年3月、東京「銀座ブロッサム」でのミュージカル。

 

きっかけになったのは、東日本大震災で家屋が流され、寺本建雄総合監督が住む東京に避難してきた、かつての「劇団ふるさときゃらばん」メンバーの夫婦（東松島市）の言葉でした。

 

「救援物資が日本からだけではなく海外からも続々届けられる。ありがたいけれども、何か施しを受けているようで少し後ろめたい気持ちになる。ありがとうを伝えられるのは、現場で働く自衛隊や市職員、ボランティアの人たちだけで、救援物資を支援をしてくれた人たちに伝えることができない。」

大震災からわずか2ヶ月しか経っていない、心に大きな傷を負った被災者からの言葉はあまりにも衝撃的で、その言葉は今でも胸に刻まれていると、寺本監督は言います。

 

 

大震災から数か月後、東京に避難していた夫妻は東松島市に戻り、仮設住宅に住みながら同じ境遇の住民に声をかけ、114名が集まりました。

 

そこから約半年間の稽古を経てのミュージカル。

タイトルはミュージカル「とびだす100通りのありがとう！」。

「寒い中、高台で主人がいない中、2晩過ごしました。2晩目に主人が来てくれました。いつも無口の主人が泣きながら“亡くなられた人の間をまたいでやっと来た”と。みんなで泣きました。」

「体育館の中に津波が来て洗濯機のようになった。高台で避難中、家が流されていくのが見えました。」

一人ひとりが語る生の声、当時わずか1年前の100通りの物語。

苦痛や涙をこらえ、必死に生きる114名の思いと感謝の気持ち。

チケットはわずか4日間で売り切れ、200人がキャンセル待ちとなり、急遽ゲネプロをご招待(無料にして募金箱を設置、400人)。

本番では、午前午後2回の公演で2000人が来場し、皇族の秋篠宮様ご夫妻と次女の佳子さまもお見えになりご鑑賞いただきました。

 

 

 

東京での公演から11年後の2023年3月4日。

私たちが住み今を生きる宮城県東松島市での公演。

あの日から12年、道路が復旧し、新たな家屋が建ち、尊い命が育まれています。当時3歳だった出演者の子も中学生になりました。

亡くなられた方にとっては13回忌を迎えるこの地で公演することに、様々な葛藤もありました。

世界で起きる命を奪い去る戦争、コロナ禍で不安を抱える毎日に対し、ミュージカルを通して私たちが伝えてきた「命を守り・灯し続けていくことの意義」「生きていくことの意義」を、大震災で被災し同じ境遇の中で生き続けている方々、当時遠く県外から支援をしてくださった方々、戦争に苦しみコロナで不案を抱えている全世界の方より多くの方々に届けられたらと思います。

 

どうか公演を迎えるその日まで、温かいご支援をよろしくお願いいたします。