見えない敵。

10年前。

 

福島ナンバーの車は、福島以外の地域で、

傷つけられたり

福島から避難先のポストに、

「早く出ていけ」と手紙を入れられたり

南相馬から東京の大学に進学した女の子は

「バイト先で『かわいそうだねって言われた。。。私ってかわいそうなの？」と言いにきたり。。。。

 

 

あの頃、福島という地域は、特別な意味を持っていた。

 

今、東京からどこかにいく、ってことに

とても慎重になる、と杉組の親達は言う。

この２年間、東京から動けず、もちろん

頻繁に行き来をしていた南相馬に

子供達も親達も、一度も来ることができない日々が続いている。

 

 

今、人口の多い街は、特別な意味を持っている。

 

 

私は、トモプロを始めるときに

「これは、実験です」と言った。

 

放射能がうんぬん言われる土地に

東京から子供達を連れていき、歌ったり、踊ったり

大丈夫なの？頭おかしいんじゃない？

菜穂ちゃんは、すごいね〜

 

とか、言われたけど、何もすごいことをやってるとは

思わなかった。

 

 

ただ、そこに、同じ歌とダンスを歌って踊る友達がいるから

いく。

それだけ。

 

だってそこには、暮らしてる人も、子供達もいる。

 

状況は違えど、その場所を選び、そこに暮らす人々のことを

とやかくいう必要はない。

 

 

私は、南相馬を、好きになった。

だからいく。

それだけのことだった。

 

 

すごいことでも、立派なことでもなんでもない。

そこに、友達がいるから行く。

 

そしてこのプロジェクトは実験だと思っていた。

数年後、このプロジェクトで一緒に踊ってる子達の中から

杉並から通った子の中から

何か、病気になる子が一人でも出るのか、と

 

杉並区役所のカウンターで

「子供達を南相馬に連れていきます」と言って

「連れていくな」と怒られた時も

「大丈夫だから、連れていく」

と、言い張りました。

 

 

 

大丈夫、その言葉に完全な自信はなかったけど、

信じるしかなかった。

南相馬に暮らすみんなが、あんなに元気で、笑顔で、

その街を愛してるエネルギーは

どんな病にも負けない、と。

 

 

 

 

そして、10年。

このプロジェクトに参加する子達の中から、

何か病になった子は、もちろん一人もいません。

 

 

歌うこと、踊ることで、

心も体も循環させて、

何か黒い物質を外に出す。

 

 

昔から、歌うこと、踊ることは、祈ることでした。

 

 

苦しい時や、悲しい時、

どうにもならない時に、人は

歌って踊って祈りを捧げて窮地を乗り越えてきた。

 

 

私は、、無意識にその

「祈り」を10年続けてきたのではないかと思います。

 

 

どこに敵がいるのかわからないことなんて、

これまで何千もの間、何回もあったはず。

 

けれど人はこうやって生き延びて、賢く進化してきた。

 

 

今、もう一度、祈りながら

この窮地を賢く乗り越える方法を見つけなくちゃと思う。

 

 

福島が学んだこと

それを、今度は、逆に杉並に教えてあげる番。

 

 

 

人は、学ぶから、賢くなる。

賢くなるから、成長する。

 

 

子供達が教えてくれた10年は、宝物。

 

 

だからこのコロナの中、絶対に、この本公演を

開催して、もう一つ、人間は思いやりと、賢さを身につけれるんだと、

実証したいのです。

 

 

10年前が、今に続いてる。

 

それを、トモプロは伝えたいのです。