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元看護婦の母が〝命〟というテーマに対峙した脳腫瘍闘病記を本に
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支援総額

346,000

目標金額 1,500,000円

支援者
15人
募集終了日
2019年6月28日

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2019年06月17日 21:19

本文の一部抜粋を紹介します<7>

   四月十六日(土)晴

 今日は絶好の花見日和……。

 「桜の季節まで生きられたとしても、その頃にはベットから離れられないようになっているでしょう……」と、田上医師に言われた母を車で連れ出した。

 なのに母の顔は冴えない。喜んでいるのかどうかもよく分からず表情が薄い。でも、これが最後の花見になるのか……というような 悲愴感はない。それほどに気持ちの良い青空と桜花であることに感謝。

 

 有明神社、早春賦碑、穂高公園、そして我が家の前の借景桜……と、界隈の桜花名所をぐるりとめぐり終えてふと思い出した……。
 去年の春、散歩先の母から、「南小学校の桜がものすごいよ、お前も見においで……」と、電話を受け、行った事がある。確かにそれは見事であり、いつも車で通り過ぎるだけの私には気づくことのない小さな感動だった。
 あの桜を見てから帰ろうか……と、言うと、どうしてだか母は必死でイヤイヤをする。もう疲れたのだろうか……。残念だが仕方ない。

 

     来る年も 蘇《かえ》ると約す

        爛漫を

     見おさめる母 如何に観るらん

 

 

   四月二十日(水)晴

 立つはおろか、座っている力さえ今はもうない。いったい、人間がこんなにもなってしまうものだろうか。まるで人形のように、支えがなければ一秒ともたずにクタっと倒れてしまう。

 でも良い、それでも良い。かつて、母がその母に「母ちゃんがダルマみたいなったって、ヨシ子が面倒見てやるからね……」と言ったように、私も同じ事を言ってあげた。

 

 

   四月二十二日(金)晴

 夕食後、部屋へ戻るなり母が何か言いたそうにした。

 喋ろうとする母の気持ちが折れぬように、ベットに戻すのも電灯をつけるのも後回しにして、私はしゃがんで母の口元へ耳を近づけた。

 「お母さん、仕事あまりしてないよ……」と、母は悲しそうに顔を歪め、ようよう言葉を発した。

 何ら生産性のない日々をおくり、ただ他人の世話になるより仕方のない自分を不甲斐なく思っているのか、「やだよー」と、悲痛に首を垂れ、泣きじゃくった。

 

 「お母さんは、もう充分に働いたよ。むしろ、若い時に働き過ぎたから疲れちゃったんだよ。

 十六(歳)のころから看護婦やって、休みの日もろくに休まず、俺たちを育てるために配膳会や化粧品のセールス、土方紛いの仕事までしていたじゃないか。だから、もういいんだよ。大威張りで、ゆっくり休んでいれば……」

 

 事実そうである……。長年の苦労とストレスは祟り、平成四年、五十五歳で初めての脳梗塞を発症。看護婦をやめるきっかけとなった。

 

 「仕事いっぱいさせてごめんよ……。悪かったね……。

 だから、もう何も遠慮することなんてないんだよ。今のお母さんの仕事は、音楽を聴いて楽しい気分になる事と、ちゃんとご飯を食べて美味しいって思う事。楽しい、美味しいっていう実感が生きている実感になるんだから……」

 

 涙は心を浄化する……。けれど、母の病気は、その機能までをも損なってしまった。

 母は「ありがとう、ありがとう……」と繰り返し、顔をクシャクシャにして泣いているが、涙は少ししか出ない。もっと大声をあげて、ボロボロと思いっきり涙を流したいだろうに……。

 

 「近頃は、頭に雲がかかったように、夢をみているような時があるでしょ。これから、そんな気分になる時間が多くなっても不安に思ちゃいけないよ。それは、お母さんが苦しまないで済むよに麻酔をかけてくれているんだから。

 そういうのを 〝 天の配剤 〟って言うんだよ。この身におきる全ての事を空の上で誰かが見ていて、必要な事を必要な時に起こすんだ……」

 少し複雑な話を、母は頷きながら真剣に聞いている。

 脳腫瘍の患者は、先ず人の話が理解できにくくなるらしい。母もその症状はとうに出ていることだろうに、くどくどとした話に飽きる様子も見せず、一所懸命に解ろうとして耳を傾けている。

リターン

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