森乳サンワールド様が作られた、母乳がもらえないゾウのための人工乳“エレファントミルク”

「森乳サンワールド様が作られた、母乳がもらえないゾウのための人工乳“エレファントミルク”」

母ゾウの代わりに人間が子ゾウを育てる人工哺育はとても難しく、残念ながら日本の動物園で、アジアゾウの人工哺育の成功例はまだありません。

自然界では、ゾウは10頭～20頭位のメスゾウを中心とした群れで暮らし、群れの子ゾウは、メスゾウたちで協力して子育てをします。子ゾウは2歳頃まで母ゾウからお乳を吸って成長します。若いゾウは、群れの中で先輩のゾウたちの出産や子育てを見ながら学んでいきます。

しかし、動物園で幼少時から暮らしているゾウは、群れの中での子育ての学びと経験の機会が得られないため、出産することができても、育児放棄をしてしまうことが多いと言われています。また、母ゾウから授乳ができないと子ゾウは生存率が低くなってしまいます。

このような背景から、当園のプーリーの母乳の成分を分析して頂きました。その結果、ゾウの母乳には、グルコサミン骨格を有する多糖類が牛、馬、人などに比べて多く含まれていることが明らかにされました(※1)。

この多糖類がゾウの成育に必要な骨の成⻑に寄与しているものと考えられています。そしてこの知見を活かし「エレファントミルク」（森乳サンワールド）としてゾウ用の人工乳が製品化されています（※2）。

「結希」は、母ゾウの「ズゼ」から育児放棄をされましたが、幸いなことに、生後9ヶ月であった「りり香」の子育てをしていた「プーリー」からお乳をもらうことができました。乳兄弟の「りり香」とお乳を分け合って成長した、世界でも稀な ”乳母” による哺育により成長しました。

しかし、本来ゾウは双子を出産することは稀で、代理母のプーリーからの母乳だけでは栄養が不足する可能性が考えられました。そこで、結希には「エレファントミルク」を補助的に飲ませてきました。おかげで結希はここまですくすくと成長しました。

この度、このようなご縁もあり、森乳サンワールド様からもご支援を頂きました。この場を借りてお礼を申し上げます。

※1. Takatsu Z. et al., Elephant’s breast milk contains large amounts of glucosamine. J Vet Med Sci. 2017 Mar 18;79(3):524-533. doi: 10.1292/jvms.16-0450.

※2. 特許番号6525265「ゾウ用人工乳」2019年5月17日