【CACI物語：卒業犬 ⑤「ケリー」そしてルカ】

通常、猟犬類は、ペットショップでの取り扱いはありません。

セッターの魅力の虜になり、ブリーダーを探し当て、ようやく譲り受けました。

そしてトレーニングを始めるに当たって、トレーナーの方に

「セッターとか猟犬はね、猟期が終わるとたくさん捨てられていますよ」

と聞かされた時の驚きは！　

探し探して苦労してようやくセッターを手にしたというのに

簡単に捨てられているとは・・・・・。そんな！

 

その後、私なりに猟犬の置かれている状況を調べているうちに

「ＣＡＣＩ」の活動を知ったのです。

金子代表に連絡を取り、何か自分にできることはないかと

「お散歩ボランティア」のお手伝いも始めてみました。

 

時が経て、先代のセッターが天寿を全うすると

迷うことなく、保護犬セッター、ケリーを迎え入れました。

 

ケリーは保護センターで殺処分間際にＣＡＣＩより保護されたそうです。

我が家に迎え入れた当初は、とてもおずおず、何をするのも遠慮がち。

これまでの苦労がしのばれるふるまいでした。

 

それでも現在は、セッター元来の陽気さを取り戻し、楽しい日々を送っています。

 

すっかり我が家の一員となり、週末は家族でケリーのために渓流遊びに出かけた日のこと。

たっぷり遊び、帰路に向かう丹沢のヤビツ峠辺りのことです。

 

走行中、道の真ん中に横たわる犬の姿が前方に見えました。

えー！頼むから立ち上がってくれ！

との思いもむなしく、至近距離まで近づいても一向に立ち上がる気配もありません。

やむ無く停車し、のぞき込むと・・・。

 

ナント、すくっと立ち上がり、自ら「トン！」と車に乗りこんできたのです。

もう、ボロ雑巾のようにドロドロに汚れた状態で、すくっと車中に乗り込んできたものですから

「何！この汚いの！乗せるわけ！　ありえなーい！」

ぎょっとした顔のケリーの心の叫びが聞こえてきました。

ブリタニー・スパニエル　ルカとの衝撃的な出会いです。

その後、「丹沢のヤビツ峠」は猟犬が遺棄されるスポットで有名なことを知りました。

沢で捨てられ、鋭利な傾斜を這い上がり、山道にたどりついたであろうと思われる

眼をそむけたくなるほどの肉球の破損状態。

何日も食事をしていなかったのでしょう。数日間の排泄物は、土と石ばかりでした。

美味しい石でもあるのでしょうか。今でも、時折石を見て、目がきらっと光ります。

 

そして口のまわり、針金がまかれた痕跡がくっきり残っています。

吠え防止のためなのでしょうか。かなりきつく巻かれていたらしく何重にも巻かれた痕跡には

もう毛が生えることなく、くっきりと浮かび上がっています。

さながら「任侠犬」という感じです。

 

それでも今は、最初から我が家にいたかのように、共に笑い、楽しい時を過ごしています。

 

ケリーとルカは、今リビングでお腹を出して、ひっくりかえって寝ています。

どの鳥猟犬たちも、このようなくつろぎを味合わせてあげたいな・・・。

心から、そう思います。