水戸芸術館の巨大バッタ、椿昇+室井尚《飛蝗》の修復・公開へご支援を
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寄付総額

5,325,500

目標金額 3,500,000円

寄付者
211人
募集終了日
2023年10月27日

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2023年09月16日 00:18

いよいよ迎えた修復 第一弾

台風の到来からのはじまり

99日と10日に予定していた、バッタの9年ぶりの公開を控え、予想通り、天気予報とにらめっこすることになった。

予定日の5日前、開催を決定したその矢先、台風13号になるだろう熱帯低気圧のニュースが届いた。その後、台風13号は関東を予報円に据えた進路をとり、開催予定日前日には茨城に上陸する予報になった。9日までに地面が乾かないことはほぼ確実視され、また災害レベルの不測の事態も想定し、9日はやむなく中止として、翌10日の1日にスケジュールを凝縮し、バッタの修復・公開を決行することにした。

 

広場に広げられたバッタ。
まずは広場に広げられたバッタ。

触角部の修復

今回のバッタ展開の第一の目標は、触角部の修復である。半年前の3月に行った点検時に最もシリコンの付着が目立ち、根元部分にぐるりとシミができていたのが左右の触角だった。しかも、シリコンの付着によって触角はすっかり重くなっていたのだ。そもそも経年劣化で布の密度が弱まってしまっていたため、作者の一人である室井尚氏が、バッタの布地にシリコンを吹き付けることで空気の抜けを少なくしようと試行錯誤を重ねていた。とくに触角は、なんとかして立ち上げたいという室井氏の強い気持ちを表すように、シリコンの塗布が目立ち、重さが5.76kg(*1)にも及んでいた。言ってみれば、シリコンが目立つ触角は室井氏の汗と涙の結晶と化していたのだ。この重さの布を既存の送風機による風だけで重力に逆らって立ち上げるのは、そもそも不可能だっただろう。3月の点検時、室井氏の思いを汲んで、椿氏および修復業者と相談し、さらに室井氏のパートナーである室井絵里氏に承諾を得て、触角を軽い素材で再制作するという修復方針を固めた。その後、再制作された触角は1.96kg(*2)と、ほぼ3分の1の重さにまで減量した。

 

いよいよ910日当日。朝10時にバッタ復活ボランティアの21名が集合し、作家関係者、業者、スタッフ含めて総勢42名がそろった。作者である椿昇氏と、室井絵里氏が見守る中、「横浜トリエンナーレ2001」のバッタ初出展時に数々の困難を乗り越えてバッタの展開を実現した横浜国立大学の学生であった安達俊信氏と小松重之氏が現場指揮にあたった。前日のうちに、全長50メートルに及ぶ巨大バッタの監視体制や注意事項、そして修復作業を含めたタイムテーブルについて打合せができていたこともあり、現場の人びとの協力と連携のおかげで修復と公開は順調に進んだ。

 

新しい触角の縫合のため本体頭部の取り付け部分を整えている様子。

 

持ち込んだミシンで触角を縫合する様子。

 

新しい触角を取り付けて、胴体内部に送風開始。
触角が立つか見守る椿氏と修復にあたった安元氏。

午前のうちにミシンを使っての触角の縫合作業は完了し、新しく取り付けられた触角は軽くなったことの証に、頭から垂れ下がりながらも風でふわふわと動きを見せた。(だが残念ながら、軽量化した新しい触角も重力に逆らって空に向かって立ち上がるには至らなかった。それだけ胴体内部の圧が低下しているというのがバルーン作品の製作のプロである修復業者の見立てである。そのため、次の修復作業には、触角を立たせるための新たな工程の追加を検討することが必要になった。)また、胴体内部はもともと左右からバンドで引っ張ることで形状を安定させる構造になっている。だが、これらも経年劣化で留め具が壊れて効かなくなっていたため、バンドの交換も予定通り行った。

 

変化した風景のなかで新たな世代と。

今回の修復・公開プロジェクトの第二の目標は、バッタを9年ぶりに——水戸ではちょうど10年ぶりに——、多くの人びとに見てもらうことだった。新しく水戸市民会館が隣に建ち、周囲の風景が大きく変わったこの機に、水戸芸術館の広場に再びバッタを降り立たせることで、当時の記憶を呼び覚ますとともに、新しく生まれて来た世代と一緒にバッタを眺めることで、経過した年月と変化した風景の中で、新たな記憶を刻むことができればと思った。

 

水戸芸術館の南に道路一本はさんで新しく建設された水戸市民会館の外観をのぞむ。

 

ここからの景色が大きく変わった。欅の奥にあるのが水戸市民会館。

 

バッタを預かる当館としては、制作から22年、収蔵から21年という時間の流れをふまえ、なぜ2001年に横浜トリエンナーレのために作られたバッタが水戸にあるのか、言い換えれば本作が水戸芸術館に収蔵された経緯について、作者および当時の担当学芸員とともに振り返り、本作の位置づけについて公に確認し、記録に残すことの重要性を意識していた。(そのため開催したトークイベントの要旨については「アートセンターをひらく2023—地域をあそぶ」展図録の別冊に記す。)

 

次の修復なるか?

クラウドファンディングのチラシと。

 

そして第三の目標は、クラウドファンディングの進捗が順調であれば、修復を次のステップに進めることだった。次のステップとは、汚れがひどい足のつま先6本を新しいものに取り替える目的で、まずは元の足先を取り外すというものだ。足先を取り外すにはバッタは物理的に展開されている必要があり、今回取り外さなければ、もう一度、人手と資金を追加で用意しなければならない。クラウドファンディングの進捗が順調かどうかの目安として、足先の取り替えにかかる修復経費分の資金が集まっているかどうかを判断基準に考えていた。実際にはAll or Nothing形式のため、目標金額に達しなければ返金となる。だから目安はあくまで見切り発車の目安でしかない。バッタ展開の直前、多くの方々のご支援のおかげで、なんとか目標金額の半分に達するめどがたち、足先6本の取り外しに踏み切った。翻せばそれは、何が何でも目標を達成しなければならないという背水の陣に、自らを追い込んだことを示していた。

 

 トークイベントが終わった1440分頃、空の雲行きが怪しくなっていた。バッタを雨に濡らしてしまうと、よく乾かさなければカビが発生する。それでは修復プロジェクトが本末転倒だ。タイムテーブル通り、さっそく送風を中止し、しぼんだバッタの足先を修復業者が二手に分かれて取り外しに入った。左右の前肢のつま先が4本解けた時点で頭部側の胴体半分の折り畳み作業に入り、蛇状に細長く畳んだバッタをトラックの荷台に積み込んでいった。そして、後肢のつま先2本が完全に解け次第、残り半分を折り畳んでトラックに積み込むという臨機応変な連携プレーが指揮された。途中一時的にぽつぽつと雨を感じる瞬間があったが、なんとかバッタを濡らすことなく積込みを完了した。バッタ復活ボランティアのみなさんの協力のおかげで、予定より1時間早く16時頃、広場での作業は終了した。

 

終わってみると、現場がスムーズに運んだのはよかったが、個人的には運営面のあれこれに気が取られすぎて、見に来てくださった方々の様子をうかがう余裕がなかった。そのことがとにかく悔やまれる。だが、事故や怪我なく無事終了したことを慰めとしよう。次の公開にはもう少し余裕をもってあたりたいし、楽しみにしてくださっていた人たちがバッタを見られる時間をもっと確保したい。ただ、天候とにらめっこする星に生まれきたバッタだけに、公開の日程や時間が予定どおりになるとは限らない。まさにナマモノを扱うようなものだ。この特異な現代美術作品を守りながら親しみ、受け継いでいくこと——そのために、クラウドファンディングを成功させなければ! しばらくはそのための奔走がつづく。

 

触角は立ち上がらなかったけれど軽くなって、風に揺られてゆらゆら。

 

注釈:

*1、*2ともに、修復にあたった業者が計測した重量。

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※作品元ピース:修復によって差し替えとなり、作品《飛蝗》から切り離されたピースの断片をお送りします。サイズ:約15×15cm(予定)
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