詩「葡萄府」

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今日、７月26日、蝦名泰洋さんの命日です。3年が過ぎました。信じられない、というか、

もしかしたら、本をつくるためにかくれているだけなんじゃないか、と思えてくるのですが。

 

蝦名さんの詩歌に出会えた喜びを、みなさまとわかちあえるとうれしいです。

命日なので。最後の詩を紹介しようか、それとも最初の詩がいいか、迷ったのですが。

最初のにしよう。
詳細不明ですが、1992年より前に書かれたと思われる初期詩篇から。大好きな詩を。

 

 

　　　葡萄府

 

　たとえば　どこでもいい

　葡萄がたくさん実る場所へ行きたいと

　思えばそれは素敵なことではないか

　思いやりと拒絶のかなしい攪拌で

　やさしい人は疲れている

　汽車で　

　歩いてでもいい

　見渡すかぎりの葡萄畑にたどり着けば

　そこにも人々は集まるかもしれない

　道が通り　市が立ち

　新しい街ができるだろう

　老いた少女は若返り

　新しい大人になるだろう

　憧れへの浪費は

　神さまへの所場代だ

 

　遅すぎるなんてことが

　あるだろうか

 

（写真は1992年「文芸あおもり」から）