完全復元への道のり②～蘇芳について～

『東大寺 執金剛神立像』完全復元プロジェクトへの応援、誠にありがとうございます。

 

　今日は、復元彩色に用いる絵具についてすこしご紹介いたします。

現在、蘇芳（すおう）という、赤紫系の染料（＝水に溶け込む色料）の抽出実験を繰り返しています。

　蘇芳はインドネシアやブラジルなどに分布しているマメ科植物の一種であり、その芯の部分は天然染料として古代から利用されてきました。蘇芳は主に染めものに用いられていますが、研究室ではこれを立体彩色に適した絵具として使用するため、研究を進めています。

 

■絵具の作成過程

はじめに、粗く挽いた蘇芳の粉に蒸留水を加えます。

 

ホットスターラーという装置で加熱・撹拌します。

 

こうして得られた液体を濾過し、さらに残渣に蒸留水を加え、二番抽出、三番抽出を行いました。

 

 

 

　抽出時のpH値の違いやその他さまざまな条件によって、発色は大きく異なります。また、時間の経過とともに色が濃くなっていきます。

 

　ほかにも様々な色の復元に取り組み、奈良時代の色彩に近づこうと頑張っています。今回は鉛白下地の工程をご紹介する予定でしたが、想像以上に奥が深く、現在も模索が続いているため、赤紫系絵具のご紹介としました。先人の智慧には驚かされるばかりです。
引き続き、応援よろしくお願いいたします！