「稲生物怪録」ってなに？

「稲生物怪録」とは。

～あらすじ～

　時は１７４９年、江戸時代中期（寛延２年）９代将軍・徳川家重の時代。広島藩の支藩５万石の小さな三次（みよし）浅野藩がありましたが、後継ぎが絶えたため藩絶・合併となりました。広島藩へ引き上げる予定の旧藩士たちがまだ三次に残っていた４月の（現在の５月）夜のことです。

　現在の法務局三次（みよし）支局のあたりに稲生平太郎（元服後：武太夫）が住んでおりました。平太郎は隣家に住む相撲取りの三井権八と、どちらが強いか肝試しをすることとなりました。比熊山（ひぐまやま）の古塚で百物語をしたものの決着がつかず、くじ引きで印がついた方を引いた方が、地元で触るとたたりがあると言われる神籠石（こうごいし）に印をつけてくるというゲームをすることにしました。印の付いたくじを引いたのは平太郎でした。当日はおりからの土砂降り。真っ暗な山道を一人登り、約束通り印をつけて下山しました。

　それからしばらく何もない、いつも通りの日々を過ごしていますが、７月１日から３０日にかけて昼夜問わずさまざまな妖怪が平太郎の家に出るようになりました。若い女の生首が逆さになって空中を舞ったり、老婆が寝ている平太郎の顔をなめるなど・・・。

　しかし、妖怪がなぜ出るのかその理由を知りたい平太郎は、勇気を奮い起し恐れません。とうとう、魔王・山本五郎左衛門が現れ、平太郎の豪肝さを褒め降参しこう言います。「魔王として位を上げるために、人間の子供を百人驚かす修行をしていたが、８６人目であなたに当たり挫折となってしまった。ここで終わるのは残念だが、あなたの勇気にはおどろいた。後に私の好敵手である信野悪太郎があなたを驚かしに来るかもしれません。その時にはこの木槌で私を呼んでください。必ず助太刀に参ります。」魔王は木槌を平太郎に差し出すと、手下の妖怪たちが担ぐ籠に乗って空の彼方に去って行きました。

※百物語：怪談話を100話語り終えると、本物の妖怪が現れると言われる、日本に残る語り遊び。

～主な登場人物～
◎主人公：
稲生平太郎（元服後：武太夫）
◎その他：
・勝弥 平太郎の弟。７月１日から親類の家に預けられる
・三井権八 三次市布野町出身の大関クラスの相撲取り。事情で江戸追放となり三次に戻ってくる。

～ドキュメンタリーといわれる理由～
◎稲生家の存在：
平太郎の子孫で稲生家１４代当主の稲生平太郎氏夫人は広島市安芸区畑賀で閑静な日々をお過ごしになられたようです。
◎秘宝「魔王の木槌」：
現存します。
所蔵者 国前寺（広島市東区山根町３２－１）毎年１月７日にご開帳されています。
◎登場場所や建造物：
・比熊山：
天正１９年 三吉広高が八次村比叡尾山城から移城。
関ヶ原の合戦後、城を廃します。
・鳳源寺：
三次浅野藩浅野氏菩提寺
・妙栄寺：
三次時代の稲生家の菩提寺
木槌が国前寺に奉納されるまで、こちらに奉納されていた。義兄、新八のお墓があります。
・太歳神社：
山本五郎左衛門と初対面した時、平太郎の後ろにいた氏神様。絵巻物（無題）ではお礼参りした記載が有ります。