沖永良部島と雪枝さん、『みちゃぬふい』の話

言語復興の港の横山晶子です。支援額が320万円に到達し、ネクストゴールが見えてきました！支援して下さった皆様、本当にありがとうございます。残り10日、引き続き応援よろしくお願いいたします！

 

「えらでぃ えらばらぬ えらぶじま」

選んでも選べない（ほど良い）沖永良部島。 これは、島の方たちが自分たちの島を語る表現です。

 

 

その言葉の通り、いつも太陽がさんさんと暖かく、道々に野生の花が咲き溢れる沖永良部島は、私にとってホッとできる第二の故郷のような場所です。

 

 

 

私は10年前から沖永良部島に通い始めたのですが、最初に覚えた方言は「がんがん（そうそう）」と「あべー（あら！しまった！）」でした。

 

調査を始めて2年目に、今回上平川方言の朗読をして下さった、上平川集落の松村雪枝さんにお会いしました。長年都会でナースのお仕事をされていましたが、ちょうど島に戻られたところでした。

 

 

雪枝さんは自分で創作物語を書かれていて、それを私にも読ませてくれました。小さな女の子が出てくる話なのですが、やわらかな描写のなかにドキッとするような毒があり、とても魅力的な話です。

 

 

最初は共通語で書かれた話でしたが、私がアメリカに留学することになったとき、雪枝さんが「お土産に」と、すべて上平川の言葉に翻訳してくれました。A4で100ページ以上のその重みに、このお話をいつか世に出したい！と強く思いました。

 

しかし、当時の私はその方法がよくわからず。言語復興の港リーダーの山田さんに話をすると、ぜひ出版しようということになりました。その後、出産で島に行けない私に代わって、山田さんが足繁く島に通って下さり、2016年に『みちゃぬ ふい』が出版されました。

 

 

 

『みちゃぬ ふい』は、大紙芝居となって敬老会で披露されたり、老人ホームで慰労に読まれたり、様々な形で読まれています。そして、絵本を小学校に贈ったことをことをきっかけに、新しい言語継承の取り組み「しまむにプロジェクト」が始まり、いま沖永良部島ではしまむに継承の仲間がどんどん増えています。

 

 

『みちゃぬふい』のゆきちゃんが様々な縁を結んでくれたように、今回出版する『ましゅ いっしゅーぬ くれー』も、地域でしまむにが使われる1つのきっかけとなり、そして新たな出会いを運んでくれることを願っています。

 

次回の私の連載では、国頭方言の朗読をしてくださった田中美保子先生と、しまむにのユニークなオノマトペを集めた絵本『シマノトペ』を紹介します。

 

※この記事で使用した島の風景の写真は、写真家の葛西亜里沙さんが、沖永良部島の写真集『神の島のうた』を制作する際に撮影した写真です。