山本清史さん（映画監督・脚本家・小説家）からの応援メッセージ

「ナイトクルージング」は、常識を揺さぶってくれると同時に、「障がい」は人生からなにも奪わないことを気づかせてくれるでしょう。

 

ぼくは大学で心理学を専攻していたのですが、あるとき「障がいは常識が生み出す」ということを知りました。例えば、我々のようないわゆる「健常者」は、目をつぶって自由に歩き回ることのできない「障がい者」でもあります。光がなければ何もできない「光依存症」です。

 

そんな極端な、と思いますか？　

でも、映画監督としては深刻な悩みです。

 

考えてみてください。我々は目が見えるからこそ、見たことのあるものしかベースにできません。「視覚依存症」です。どんなに優れたファンタジー映画も、目が見える人が考えた空想でしかないわけです。

 

「まだ誰も見たことがないもの」は「まだ世界を見たことのない人」からしか生まれないのではないかと、ぼくは考えてしまうのです。

映画監督にとって目が見えることは、はたして「健常」なのでしょうか。

目が見える監督の作品は凡庸だよね、なんて言われる日が、近い将来やってくるかもしれません。

 

山本清史（映画監督・脚本家・小説家）

1978年、東京都八丈島出身。「ナイトクルージング」の前作「インナーヴィジョン」に出演。

映画、テレビドラマ、ゲーム、小説と幅広い分野で活動。2017年には、国民的ゲーム「ファイナルファンタジー」シリーズ初の実写ドラマ化として話題になった「ファイナルファンタジーXIV　光のお父さん」を監督。国内ドラマとしては異例の世界配信が決定し、19言語に翻訳され190か国で視聴されている。