#アンモナイト豆知識 古生態編３ ユーボストリコセラスの右と左

バネ型異常巻きアンモナイト「ユーボストリコセラス」の右巻きと左巻き

巻貝のほとんどは種により巻きの方向が決まっていますが， 巻貝型やバネ型の異常巻きアンモナイトでは，同種の中に右巻きと左巻きの両方が存在するものが多くあります．右巻きと左巻きは一体何を意味しているのでしょうか!? 

雌雄の差？おや？時代ごとに左右比がかわってくる？

アメリカの研究者ピーター・ウォード博士は，カナダで見つかる「ユーボストリコセラス・エロンガータム」において，右巻きと左巻きの割合がほぼ同数だったことを報告し，これらは雌雄の違いである可能性を示唆しました．

 
一方で，御前博士らによる鳥屋城層群での調査では，ユーボストリコセラス・エロンガータムの右巻きと左巻きの個体数の比率を層準ごとに比べると，時代とともに右巻きが多くなっていくことがわかりました． 
右巻きと左巻きがもしも雌雄なら，時代によりその比率が変わってしまうのは考えにくいことです． 御前博士らは，右巻きと左巻きは雌雄ではないことのほか，環境の変化とも無関係であり，左右の決定は遺伝的な要因が大きいと結論づけました．
このような右巻きと左巻きの個体数の比率が全地球的な変化だったのか，それとも地域的な差だったのでしょうか．それが解き明かされると，遺伝的な集団の大きさがアンモナイトでもわかるかもしれませんね．DNAが化石として残る可能性は極めて低く遺伝的要素にまで踏み込める古生物学研究は少ないのですが，十分な数の標本調査によっては形態解析から遺伝的な要因にまで言及できます．異常巻きアンモナイトの場合は，そもそも数を集めるのが大変な気がしますけどね・・・．

異常巻きアンモナイトの古生態は謎だらけ

さて，これまで３回に渡り，異常巻きアンモナイトの古生態をお伝えしてきましたが，異常巻きアンモナイトの古生態はまだまだわからないことだらけです．今回のクラウドファンディングによって製作される #異常巻きアンモナイト3D化石図鑑　をきっかけに異常巻きアンモナイトに興味を持った方々がこの謎に挑戦してくれることを願っています．皆さん，未来の古生物学者への応援をよろしくお願いいたします！