あの日何が起こったのか…被災時の様子と今の気持ち

 

あの日は避難所にお父さんと行ったのよ。でも人がいっぱいで入れなくて家に帰ってきたの。一晩中非常アラームもなっていたから、疲れて寝込んでしまってね。

 

猫が外を威嚇している声で起きて猫の視線の先に目をやると、茶色い水が家に流れ込もうとしていたわ。慌てて、雑巾やらタオルやら敷き詰めたけど、あっという間に水は膝丈になって…。畳は浮き上がるし、冷蔵庫も持ち上がって動きだした。「こりゃダメだ!!」と猫を抱いて階段を駆け上がったの。

 

8段目まで水が来て、「どうしたものか…」と考えていたら、チキンラーメンの袋が流れてきてね (笑)　これまた慌てて引き寄せたのよ。「よかった。これで5日分の食料は確保できた!!」って思ったわ (笑)

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旦那さんは趣味の菊が置いてある小屋へ早朝から出かけていて不在。

 

Aさんはベランダで助けを待つことに。住み慣れた街の変わり果てた景色に息をのんだ。

 

しばらくすると、近所にあった水防施設のボートに乗って旦那さんが迎えに来た。

 

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豊野駅の南口までボートで行って、駅から線路を歩いて自分の畑へ移動して、ビニールハウスの中で丸2日間過ごしたの。食料や日用品は避難所でもらって過ごしたわ。水が引いてから家に戻ることにしたの。浸水前にお父さんが軽トラに乗って出かけていたし、車は車検に出していたから車で家に戻れたの。不幸中の幸い（笑）

 

家に戻ったらすごいありさま。言葉を失ったわ。

 

いろんなものが倒れていた。すぐに大勢のボランティアさんが片づけに入ってくれたの。ボランティアは若い子も多くて「この子たちがこれからの社会を作っていくんだ！」って思ったわ。本当に本当にありがたかった…。

 

 

世の中捨てたもんじゃないわよね。

 

快適じゃなくても生きられるし、生き抜いて人とつながって、希望が繋がっていくんだって思ったの。ご近所で、お風呂に入らせてもらったのもありがたかった。

 

この家も壊すつもりだったけど、もう一度この家に夫婦で住もうと思い直したわ。

また水が来るかもしれないけど、その時はその時。

 

今はボランティアさんに柱の泥やカビをきれいにしてもらってるわ。

失ったものは多いけど、気持ちはめげないわ。

 

人の強さと温かさを教えてもらったからね、頑張れるよ！

 

（２０２０．３．１０　　取材・文　池田　美紀）