本番までいよいよ２週間

コンサートの構成がだいぶ見えてきました。

今回はテーマがあるコンサートで、共演者もいるので、構成をある程度かためてのぞみます。新鮮です。

ふだんはひとりでピアノ弾き語りするので、お客さんの顔を見て、その場で選曲を変えることもあります。

 

少しだけネタバレです。

祖父、金素雲は、関東大震災の直後、東京の下宿を焼け出されて大阪に逃れました。

そこで体験したことを随筆「真新しい名刺」にのこしています。

わざと朝鮮服を着て市電に乗り、車掌とひと悶着あった末・・・

ひとりの日本人に救われて、命拾いしました。

「真新しい名刺」は、フォークシンガーの中川五郎さんがアルバム『どうぞ裸になって下さい』でうたっています。名演です。

 

私もうたってみたいなあと思って、五郎さんのうたうメロディーで試みたのですが、しっくりいかず、朗読してみました。

そうしたら、うたになっていました。びっくり！

それ以来はまってしまい、東京下北沢ラカーニャの季節公演をはじめ何回か朗読しています。

他人のことばである感じがありません。響き、リズムに身体的違和感ゼロ。

孫だから？　日本語と韓国語の両方をからだにもっているから？

内容は重いのに、これを詠むと快感をおぼえるのです。

岡山県立図書館でも思いっきりこの随筆をうたうつもりです。

 

ここからの話はコンサートではしません。あいにく時間がなさそうです。

祖父の命を救った恩人、西阪保治さんの息子さんである西阪盾さんと、私はときをこえて東京の阿佐ヶ谷東教会で出会いました。

教会員として数年間をごいっしょしました。

祖父はあのときの名刺をたよりに、後年、岩波文庫を抱えて西阪さんを訪ねたようです。

「父はあなたのおじいさまを大変えらい人だといつもいっていました」と西阪盾さんはおっしゃいました。

不思議な不思議なめぐりあわせです。

西阪さんがいなかったら、私はこの世に生まれなかったかもしれません。

 

一ツの運命と一ツの運命とが

ぱったり出会う

その意味も知らずに

その深さをも知らずに

（茨木のり子「りゅうりぇんれんの物語」より）