震災後10年メッセージ Vol.2：総合地域医療教育支援部 菅野武

東日本大震災からまもなく10年を迎えます。

今週は、大学関係者からのメッセージを支援者様へお届けしております。

 

本日は東北大学病院総合地域医療教育支援部  菅野 武 医師のメッセージです。

 

 

わたしは、15mの津波に呑まれた南三陸町の病院の中で東日本大震災を経験しました。たくさんの命が一度に失われましたが、生き延びた命を失わないように皆で必死に被災に向き合いました。

 

その時の経験を元に、東日本大震災後1か月に集中して多くの出血性胃潰瘍が災害ストレスに関連して増えたことが、私たち東北大学発の研究で明らかになりました。

 

一方で緊急内視鏡の技術の底上げができれば、出血性潰瘍の方の命をもっと救えるのではないかと思い、私はいま内視鏡処置のシミュレータ開発をしています。シミュレータでの教育は患者さんを傷つけることなく、難しい手技や知識を身につけ、繰り返し練習することにとても有効な方法です。

 

私たち医療者は、いつも患者さんを助けたい。けれど、あまり経験したことのない手技や治療を教科書頼みで行うことは、時に患者さんを危険に晒すかもしれない。

 

シミュレータとその教育ができる人材があれば、地域医療の現場の方も最新の技術知識を学ぶことがより容易になります。

 

今、コロナウイルス感染症が拡大する中で、ECMOなど最新技術を学ぶ機会が一層求められています。東日本大震災から10年、新しい困難を乗り越えるため、あなたの力を貸してください。

 

東北大学病院 総合地域医療教育支援部 （元 公立志津川病院医師） 菅野 武