つなっぐ理事　児童精神科医　丸山先生からのメッセージ

　児童相談所では、多くの傷ついた子どもたちに出会います。何があったのか話をすることは、子どもにとって大きな負担です。「誰にも言えない」「怖い」「恥ずかしい」「忘れたい」「自分が悪かった」「自分さえ我慢すればいい」「何があったのかわけがわからない」・・・様々な思いや感情に圧倒され、話をすることをあきらめたり、やめてしまう子どもも多いのです。話を聞いた大人の反応にまた傷ついたり、わかってもらえないと絶望してしまう子どもも少なくありません。

 

　付添犬は、物言わず、ただひたすら子どもに寄り添います。犬を撫で、添い寝し、一緒に遊んだりするうちに、子どもの表情が緩み、話をする勇気を持てるようになります。ゆったりと穏やかに寄り添う犬から、子どもは「大丈夫だよ」「話していいんだよ」というメッセージを受け取るのです。子どもが勇気を振り絞って新たな一歩を踏み出そうとする時に、付添犬が寄り添うことで、子どもに「ひとりじゃないよ。これからきっといいことがあるよ」と伝わることを願っています。

 

　付添犬の取り組みは、日本ではまだ始まったばかりです。しかし、アメリカを始めとした各国でこのような活動に携わる犬はどんどん増えています。傷つき、周りを信用できなくなった子どもたちが、人に心を開くことは難しくても、犬がいると驚くほど落ち着いて話をしてくれることが世界各地から報告されています。

 

　大きな犬に泣きながら抱きつき、言葉を探り話をした子どもの母親は「私の子ども達が得られたこのようなサポートを受けることなく、辛い体験を強いられる子どもがいると思うと悲しくなります。・・（中略）・・これは、このようなひどい事件の犠牲者になった子どもたちのために、私たちができる最低限のことです。・・（中略）・・私たちが彼らのためにできる、せめてものなぐさめの手段です」と言っています。

 

日本にも同じように辛い思いを強いられている子どもたちがいます。被害を受けた子どもがひとりでも多く付添犬に出会い、生きる力を取り戻せるよう、安定的な犬の供給と活動普及に向け、ぜひ皆様のお力をお貸しください。

 

NPO法人神奈川子ども支援センターつなっぐ理事

児童精神科医　丸山洋子