強制排除のあと（２）　by 中村康伸

道路の反対側から、大勢の人々が張り上げる運動スローガンの唱和が聞こえてきたのだ。帰ろうとしていた多くの報道陣が、高架の下をくぐって大声の響く方へと走り始めた。警官たちも走る。僕もそれに続いて走った。

歩道に香港の人々が溢れかえっていた。誰が指揮を執る訳でもなく、運動スローガンを揃って連呼している。それらの人々を見ると、決して若者ばかりという訳ではない。街を歩いていた人たちがそのまま集結してスローガンを連呼しているように見えた。おそらく、強制排除が終わってしまうのを見兼ねて集まった人々なのだろう。

歩道に集まった人々は、車道を挟んで警官たちとしばらく睨み合った後、自然と解散していった。特に強い抗議活動を展開したわけではないが、運動がまだ終わらないことを宣言しただけでも充分なんだと思う。

座り込んでいた人々は連行されて抗議の声が聞こえなくなったが、こうしてすぐに他の人々が声を上げるために集まってきた。雨傘運動はまだまだ終わらないという事なんだろう。運動の成否を判断するのもまだ早い、ということになる。