岡山県西粟倉村出身者の幻のオリンピックランナー！！！

　皆さん、このお方をご存知でしょうか。岡山県北東部出身でもある日本初のマラソン大会で優勝された選手がおられたことを！！！

　いつか、訪問しようと思っていて、先月、ようやく、訪問することが出来ました。

 

　そのお方は綾木長之助（あやき　ちょうのすけ）【旧姓金子、１８８３～１９６９年】さんで、現在の岡山県英田郡西粟倉村坂根の出身の方です。若いころは地元の郵便局で逓送人となり、現在の志戸坂峠がある大原―智頭間（往復延べ９里）を走って郵便を運んでおられたそうです。美作市と同様に山間部での環境で練習をしていたんですね。

 

　鳥取４０連隊に入隊したころは、砂丘での演習の行き帰りに仁風閣があるお堀端を先頭切って走り、だれもが認める健脚だったそうです。

 

　　綾木さんは、除隊後、１９０９年の日本初のマラソン大会・神戸―大阪間２０哩（マイル）長距離走に在郷軍人として出場し、２位に５分近い大差をつけて優勝されました。

　３２キロ弱を２時間１０分となると、現在のフルマラソンの優勝タイムぐらいです。

　フルマラソンの記録に例えると、約２時間５０分ぐらいですね。約１００年前にこのタイムは凄くないですか。。。しかも、草履。。。

　↑優勝した綾木長之助さん

 

　日本初のマラソン大会、綾木さんの走りっぷりはどうだったのでしょう。ちなみにエントリーしたのは４０８人、書類審査、予選競走会を経て２０人が出場しました。

　全国から、健脚の持ち主が勢揃いだったそうで、ハイレベルですね。

↑左から４番目の綾木さん（番号４）

 

　　　↑大会の内容

 

　資料からよると、綾木さんは勢いよく飛び出しましたが、すぐに抜かれて７位に後退。

草履の緒が切れたものの、知人の激励で盛り返して２位に浮上。足元は足袋の選手もいれば、草履もいますね。不整地をこの草履で走るには相当な覚悟はいりますね。

　当時はどんなフォームで走られたのでしょうね。

　↑草履姿の綾木さん

　西宮で１位になると、ますます元気になり、地元選手への大声援を味方にして決勝点の西成大橋に飛び込んだそうです。

　このふくらはぎを見て下さい！

　血管が浮き出ていて、しっかりとした筋肉がついています。起伏のある山道を相当、走りこんだのではないでしょうか。

 

　綾木さんに贈られた賞金は３００円。いまのお金に換算すると１００万円くらい。優勝旗２本のほか、副賞は韋駄天の絵、清酒、椿油、洋皿など、どっさり５２点。さらに市中パレード、ホテルでの大祝宴が待っていたそうです。

 

↑賞金三百円

↑数々の賞品目録

　１２年のストックホルム五輪への出場が期待されましたが、鳥取県八頭郡智頭町の綾木家に婿養子として入り、農林業に専念するために走ることを断念したといわれています。

　韋駄天（いだてん）といえば、日本で初めてのオリンピック選手としてマラソンに出場した金栗四三（かなくり　しそう）さんが有名ですね。

 

　金栗四三さんは、日本のマラソン界の発展を支えた人物であり、“マラソンの父”とも呼ばれています。もし、綾木さんが五輪へ出場していたら・・・歴史が大きく変わっていたのではないでしょうか。

 

　この資料館に訪問させて頂いて、あらためて、私なりに確認できたことがあり、私の胸に、強く印象に残った言葉があります。

　↑綾木さん

　それは、滋賀県で開催された第２１回琵琶湖毎日マラソンで来賓として招待された開会式の綾木さんのお言葉「マラソンは体をつくるためとか、人間形成を目的にやるものではない。楽しいから、走るのです。年老いてみると、それが人生の大きな支えになっているものです。」とおっしゃっていたようです。

 

　私はまだまだ、若造ですが、少しは気持ちがわかる気がしました。

　走るのも、見るのも、支えるのも本当に楽しいです。

　今後、この美作地方から、綾木さんのような選手が生まれてくることを願っています。

 

現在、鳥取県八頭郡智頭町の石谷家住宅資料館で

令和３年８月１６日(月)まで開催されています。

 

『明治を駆け抜けた偉人 綾木長之助展』

幻のオリンピックランナー、日本初マラソン大会優勝者

「綾木長之助」氏の展示

https://www.ifs.or.jp/

 

　ぜひ、この機会に行ってみてはどうでしょうか。

智頭町教育委員会様、資料館関係者様、大変お世話になりました。

この場をお借りして、お礼を申し上げます。

 

↑石谷家住宅資料館

 

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