APPLEのDynamic Focus 3D Display vs. QDLaserのレーザ網膜投影

 　本クラウドファンディングを支援いただいている方から、「Apple社の米国特許　“Dynamic Focus 3D Display”　US　11,070,785 B2 （登録日2021年７月20日）と、QDレーザの"レーザ網膜投影技術・装置"とはどう違うのか」というご質問をいただきました。噂によると、Appleには５千人（！）規模のVR/ARの研究者・エンジニアが在籍しているそうです。

 

左：Apple特許の図１４，右：QDレーザのRETISSA Display 

 

　本日から、このご質問に少しづつお答えてしていきます。

 

1. 類似と差異　

<技術内容>

どちらも「使用者の網膜に直接画像を投影する技術」。

＜原理＞

どちらもMaxwell視という原理。

＜方式＞

・QDLaser：１本の細い平行なRGBレーザビームを瞳孔に通し、レーザビームを変調走査することによって映像を網膜上に投影する。

・Apple：アレイ光源と空間変調方式を使った２次元ディスプレイの画像を、瞳孔に一旦収束させてから、網膜上に投影する。

＜特徴・狙い＞

・QDLaser：厳密に太さと平行度が設計された細いレーザビームによって、網膜の広範囲にわたる高精細なフォーカスフリーのカラー画像を投影する（本連載の「レーザ網膜投影の秘密その１、その２」をご覧ください）。

・Apple: ある程度のフォーカスフリーが得られるが、用いるアレイ光源の種類によって、液晶ディスプレイを使う場合はフォーカスフリー性が劣り、VCSELディスプレイを使うと単色画像になってしまう。ビーム画像内の物体の遠近に応じて、各ピクセルの焦点位置を変えて、自然な画像を見せ、VＲ酔いをなくすことを特許は狙っている。

＜応用領域＞

・QDLaser：視覚支援・検眼・視覚拡張などの医療・ヘルスケア領域

・Apple：仮想現実（VR）/拡張現実（AR）領域

＜欠点（注）＞

・どちらも瞳孔の中心を光が通る必要がある。瞳孔を通らないと見えない。

注：アイボックスが狭い、という言い方がされます。RETISSA SUPER CAPTUREではこの欠点はほぼ気になりません。完全な解消にはアイトラッキングが必要です。

 

　皆さんにお伝えしたいことは、Apple社の“Dynamic Focus 3D Display”と、QDレーザの"レーザ網膜投影技術・装置"は、＜方式＞＜特徴・狙い＞＜応用領域＞がそれぞれ異なっているということです。QDレーザの技術をカバーする特許については別途ご紹介します。

　　明日は、両者の共通<原理>であるMaxwell視の解説を解説します。

 

株式会社QDレーザ　代表取締役社長　菅原　充