しまね夢こむぎ®︎プロジェクト＜特別編＞研究のきっかけと問い

 

 

 

 

いつも応援をいただきありがとうございます。

 

本日は、特別編として、多くの皆様にとって興味深い研究のきっかけと問いについて、森田教授からお送りいたします。後半に、その後の成果についてご紹介いたします。

 

 --- 以下動画より抜粋 ---

 

広島大学病院に勤めていた頃、一人の患者さんに出会いました。

 

この方は、ラーメンやお好み焼きを食べると、じんましんやアナフィラキシーという重篤なアレルギー症状を起こしていたのですが、小麦アレルギーの検査（小麦特異的IgE検査）が陰性でした。

 

そこで、確かめるために、患者さんに入院して頂いて、誘発試験（小麦を食べて運動する試験）を行ったところ、確かに症状が再現され、小麦アレルギーであると確認できました。

 

“患者さんは、小麦アレルギーであるはずなのに、血液検査では小麦アレルギー陰性である”

 

「これは、まだ解明されていない何かがあるのではないか」

そう思ったことが、当時の研究のきっかけであり、学術的な問いでもありました。

 

 ---動画の内容はここまで ---

 

 

そこで、当時島根大学に赴任中だった若き研究者、松尾裕彰先生とともに、次に示す詳細な検討を行いました（2003年）。

 

小麦のタンパク質は、水に溶ける画分と解けない画分に大別されます。水に溶けない画分に含まれるタンパク質をグルテンと総称します（下図参照）。

 

 

小麦のタンパク質を、分析機器で細かく分け、ロータリーエバポレーターといわれる冷却蒸留装置を用いて精製し、50名の患者さんの血液を用いて、各画分に対する反応性を確認したところ、多くの方が、ω-5グリアジンに対して高い反応性を示すことが明らかとなったのです。

 

ω-5グリアジンは、小麦粉中にほんの僅かしか含まれないタンパク質でした。

 

当時の小麦アレルギー検査キットは、小麦粉をそのまま用いていたために、小麦アレルギー患者さんの血液に含まれるアレルギー反応をキャッチできなかったことがわかりました。

 

2009年、上記研究成果をもとに、スウェーデンのPhadia社（現サーモフィッシャーダイアグノスティクス社）より、日米欧で、ω-5グリアジン特異的検査が発売されました。

 

このキットの発売により、小麦アレルギーの診断は、入院して負荷試験を行う必要もなくなり、より簡便になったのです。

 

今回は少し長文になりました。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。