～第７話：森との対話　part2 風のアトリエ～

アトリエにはよく風が吹きます。鳥や動物も訪れる人も皆の多くは森の傍らで立ち止まり、風を感じている様子です。アトリエを囲む木々は風が大好きで、小さな風でもよく枝葉をゆらし…大きな風では全身で荒れ狂う風を受け止め、アトリエに直撃する嵐を防いでくれる事もあり、命を育む森の存在に感謝し、緑と戯れる喜びを感じ、木漏れ日の美しさについ絵筆をとり…自然をキャンバスに写し取る時間は、穏やかで豊かに暮らす方法を示してくれます。森との対話が生きることの大切さを、命の大切さを私に教えてくれました。

ある日、森のアトリエにhu-ちゃんはやってきました。細くて華奢なhu-ちゃんは、色白の黒目勝ちの美少女でしたが、言葉はほとんど出ず言語のコミニュケーションは無理でした。障がいが強いであろう彼女はアート活動などする気もなく…なにか向いているアート活動の提案は出来ないものかと試行錯誤。私もその頃は作品として残せる物を作る努力をしていたのかも知れません。しかし、hu-ちゃんはそんな気持ちにはお構い無し、手に触るものは全てポイ捨て、絵の具も紙もポイ捨て、筆洗のお水は床にジャー！何とも🌀好きなようにやらせて見ようと…ある時期から彼女の行動に制限や提案を止め、私がhu-ちゃんに合わせることにしました。その頃、アトリエでの彼女の紙ビリビリの作業がお気に入り、時にはセロテープを使ってビリビリの紙くず達が繋がり、カラフルなモビールのようになりました。カラフルモビールは夏は表に吊るされ、森をぬけて行く風に揺れその方向を示し、秋は落ちて行く木々の葉っぱ達と埋もれました。彼女の制作は常に形として残る物はありませんでした。時には地面の上にバケツで色を撒く…しかし、その色と形は見る者に伝えたいメッセージが表現されていたりするのです。彼女の創作活動の原点は風を感じる心？身体感覚なのか？と思うことがしばしばあり、風の吹く方向に立ち全身で空気の流れを感じているようです。そして風の体感を自分で調節するのです。身体で感じる風を作り出すためにhu-ちゃんは走り、佇み、そして楽しそうに微笑みます。

野外での創作活動では、障がいのあるhu-ちゃんが、参加したお仲間の誰よりも早く、地面に敷いた大きな布のキャンバスに躊躇いも無く色を撒け、キャンバスの敷いてない土の上や自分の身体まで絵の具まみれになり色と戯れます♥hu-ちゃんは風のアーティスト。

森はいろいろな私達の表現を包み込み、緑の風とともに命の営みとして私達に返してくれます。時としてそれは言葉よりも雄弁で、言語の不自由ささえ感じることもあります。風との対話は多くの方の癒しとなっているのです。

次回は～第７話：森との対話　part３ 火祭り～です。お楽しみ♥