
支援総額
目標金額 3,000,000円
- 支援者
- 356人
- 募集終了日
- 2025年5月2日
【プロジェクトへの想い】セラミックバレー協議会 初代チェアマン、笠井政志さんへのインタビュー(後編)
初代チェアマン、笠井政志さんへのインタビュー(後編)
聞き手:水野雅文、笹田理恵 撮影:加藤美岬
3:佐藤卓さんとの出会い、ラーメンどんぶり展について
笠井:卓さんと初めて会ったのは協議会を作るちょっと前ぐらい。ある時、円一郎くんがセッティングしてくれて虎渓山のエールで顔合わせをして。僕は、開口一番に「申し訳ないですけど、佐藤さんのことを何と呼んだらいいんですか」と聞いたの。そしたら「卓でいいですよ」って。「じゃあ、卓さんでいいんですか」と言ったんだけど、初対面でも気さくな雰囲気にこの人だったら言いたいことも言えると感じた。
―卓さんのお人柄を感じられたわけですね。そこからラーメンどんぶり展とも繋がるんですね。
笠井:協議会が出来上がってからラッキーなことが続いた。橋本麻里さんは外務省や文化省との付き合いがある方なので、松屋銀座で開催した「ラーメンどんぶり展」を覚えてくださっていたことからロサンゼルスのジャパンハウスの企画としてオファーをいただいた。まさしくこれ from MINO to MINO だよねという話になったわけですよ。

―2016 年に松屋で行ったものですね。そこから、ジャパンハウスでの企画は2022年。
笠井:外務省からジャパンハウスでの依頼があって、費用は向こうが持ってくれることになった。だけど、これが本当に大変でしたね。お金の負担はなかったけれど、すごく時間が取られた。途中で卓さんから展示用に1mのラーメンどんぶりを作れないかと言われて。郡上の岩崎模型ならできるかもしれないと聞いて、直接乗り込んだけれど 80cm までしかできないと言われた。卓さんに、どうですか?と聞いたら、最低でも 1mはいると。
また打ち合わせをして。違う方法ならできることになって実現した。僕は打合せで郡上に3回くらい行ったかな。納品も自分で 2 トン車に乗って取りに行った。ゆっくり運ばないと危ないと言われて自分で運転して行った。ジャパンハウスへの書類の準備や梱包もすごく大変だった。コロナ禍真っ只中だから現地に行けなくて、Zoom の遠隔で設営の指示をした。
でも、さらに運が良かったのはロサンゼルスでの展示が終わってから戻すための手配をしていたら今度はサンパウロから声がかかり、急遽開催することに。ロサンゼルスから名古屋ではなく、サンパウロへ送ることになった。
―タイミングがすごいですね。
笠井:サンパウロでは過去最高の来場者数で 13 万人くらい入ったんですよ。その 2 つを外務省の予算で行うことができました。とてもありがたい話。でも、実は初めて展示の出来上がりの全容を見たのは昨年10月の国際陶磁器フェスだった。
水野;現代陶芸美術館でのラーメンどんぶり展もすごく評判は良かったです 。でも、現在開催中の 21_21 DESINE SITE の仕上がりを見たら 2、3 倍は良いと思いました。美濃での展示を見て良いと思った人は東京・六本木の 21_21 も絶対行った方がいい。
笠井:僕らは運が良くて、ここまでやれてきた。ラーメンどんぶり展をミラノサローネでやれないかという話も考えている。できたら面白くない?
4:美濃焼本に向けた思い
笠井:僕は本を作ろうとしていたことも知らなかった。いろいろ話す中で、束見本やページネーションまで作られていたけれど、こんな高い本を誰が買うと言われてボツになったという経緯も聞いた。そこで僕らが「卓さん、これはやるべきでしょ」と言った。お金のあてが無かったにもかかわらず。アーカイブとして本をしっかり作り込むことによって、作り上げる我々が勉強になっていくし、後世に残すべき本になると思った。今まで美濃焼の本というと学術書みたいなものばかり。だけど、これは陶芸に携わる人にとってはバイブル的な本。やきものを知らない人でも「私たちここに住んでいてよかったな」と自慢できるような内容で、最低限のやきもののノウハウを勉強できる。

―やきものに携わらない人にも読んでほしいと考えたんですね。
笠井:卓さんから、誰が見ても入り込みやすい本にしたいと言われた。そこでテーマにしたものが「ラーメン」 。ラーメンは日本食だし、ラーメンの器と言ったら誰もが知っているから、ラーメンのどんぶりを解剖する。同様に美濃焼を全て解剖して、最後は「土」 。見えるところから中に入っていくという卓さんの解剖術を美濃焼でもやったらどうだと。前から読まないといけない専門書ではなく、いろんなコンテンツがある中で、どの章から入っても分かりやすい。実際に 1400 ページほどの本になっているんだけど、文章ばかりではなく片面には必ず写真かイラスト、表が入っている。とにかく誰もが興味を持って入り込みやすい、ラーメンどんぶりの解剖から始まる本になっています 。
水野:本もいよいよ今年の夏には完成予定。撮影は全て終わっていますね。
笠井:僕らの手はもうほとんど全部離れていて、編集や校正に時間がかかっています。最初は『ラーメンどんぶりの解剖』というタイトルも『The Book of Mino』になっています 。

5:美濃の可能性をつくる「よそ者・若者・ばか者」
水野:笠井さんは、いろんな事業をやってこられています。これまでやってきたことによる手応え。地域なりご自身の変化があり、今後どんなことを考えられているのか聞かせていただきたいです。
笠井:僕はいろんなところで最近言っているのは「よそ者、若者、ばか者」 。これは今に始まったことではなくて、昔からこの 3 つが大切と言われていた。よそ者というのは外の世界から地元を見て企画を組み立てる人。これは従来の常識に縛られない行動力のある若い人。あとバカと思える、思い切った行動を取る地元の人がばか者。地元でバカな行動を取る人がもっと出てくると面白い。やっぱりこの 3 つが相まってこれから地域が良くなっていくんだろうなと本当に思っている。
僕らは地元で、業界、地場産業に関わっているわけ。だけど、いまは業界も全く関係のないよそ者が入ってきていて、みんな若い。そういう子たちがどんどん来たから、我々みたいなバカなことをやってきた地元の人たちが「やっぱりこのままじゃいけない」と感じている。少なくとも僕や秀哉くんたちはその思いを持っている。だからよそ者・若者と言われる人たちが美濃に集まりつつある今、すごくチャンスだと思っています。

―たしかに、若い人たちを中心に美濃で活動を始める人はコロナ禍前後からどんどん増えています 。
笠井:コピーライターの日暮真三さんが「世界は美濃に憧れる」というキャッチコピーを作られた。最初はなんて仰々しいコピーだと思った。よく言うわ!みたいなところが実際はあったんだよ。だけど、仏に魂入れるのは我々だと思い、少しずつ活動してきた中で、若い子たちが集まってきてくれてクラフトフェア「CCC」やアートプロジェクト「土から生える」ができたという状況は、もう他の地域にはないと思える。
水野:確かに、なかなかないと思います 。
笠井:実際にないよね。これらはセラミックバレー協議会や僕らのおかげじゃなくて、若い子たちが集まってきてボランティアで手伝ってくれたりしていているから。僕は、この子たちがこんなに頑張っているんだから我々がやれることは、もっと一回り上の人たちに理解を求めながら橋渡しができる立場で動いていくこと。ちょうど僕の 10 個上は田代会頭、坂崎義雄さん、竹内幸太郎さんたちがいらっしゃる世代。秀哉くんは、僕の 10個くらい下で、またその下に水野くんたちの世代がいる。こういうジェネレーションがうまく回っている中にあるからこそ、これから美濃の地は非常に楽しみだなと思っている。
―移住した私たちも、産地の価値を強く感じています 。
笠井:物量や規模感の中で難しいところもあるんだけど、1300 年、1400 年のやきものの歴史を持っているのは美濃の地しかないわけ。この火を絶やさないように、これからやれることはまだまだあるのかなと。ただやはり若い子たちだけではできないことはあるわけですよ。だから、そこの部分を我々が一生懸命やっていきたい。
6:本が美濃の地域に果たす役割と未来像
笠井:本作りは、本ができてからが勝負。この本を売り切る。売り切って、本をみんなに活用してもらいたい。本には専門的な内容も出てくるけど、分かりやすく書いてあるので専門書よりもよく分かる。これを全部熟読すれば美濃焼のことが分かるわけです 。だから美濃焼に関わる人はしっかり読み込んでもらって、美濃焼の全てを分かった上でものを売りに行く。これがやっぱり一番大事。歴史が語れるし、セールストークができる。僕はたまたまタイルに関係しながら育ってきた。入社する人には「たまたま縁あってエクシィズに入ったんだから、とにかくタイルを好きになってくれ」と必ず言っている。タイルが好きになれないのならもう辞めてくれって、僕はそこまで言うんですよ。タイルが好きになったら絶対仕事も楽しくなるから、
まずは好きになろうよ。そのためにはやっぱり勉強してくださいと僕は言うんだよね。

水野:たしかに、そうですね。
笠井:最近は、例えば家電を買おうとしたらネットで一番スペックとコスパがいいものを探して、家電量販店で実際に現物チェックだけをしに行く人がいるよね。だけど、量販店はいろんなメーカーのものを扱っている場所。そこの店員さんが「ここを求められるならここのメーカーがいいですよ。ここならこれですよ」と自分よりはるかに知っていたら、こいつできるなって思って、この人から買ってみてもいいなと思う。
自分はにわか知識を持っているけれどプロではないし、そういう時にいろいろ教えてもらえるんだよね。それが自分のノウハウよりも少なくて喋れなかったら、ここから買わなくてもいいと思う。それはやきものの業界でも同じ。この本を読めばセールストークがしっかりできるようになるので、僕は業界に関わる人たちは全員が読んでほしい。何を聞かれても話ができる。別にタイル屋さんだから食器を知らなくていいわけではない。器の技術をタイルに利用することもできる。美濃焼本をきっかけに自分の知識を高めてもらって、たくさんセールスしてもらいたいというのが本音。
50 年前のように作れば売れたような時代にはならないかもしれないけど、メイドインジャパンは先人の人たちが作ってくれた大きなブランドなので、これを利用しながらインバウンドの人たちも含めてメイドインジャパンを世界に発信できるチャンスだと思う。この本をきっかけに美濃焼が世界に広がっていってほしい。
―美濃焼本を通じて個が強くなることによって、産業もきっと強くなりますよね。
笠井:そうだね。関わる人たちがみんな熟読してくれたら、他の産地のものより絶対に売りやすくなると思う。そして、一般の人も読んでほしい。美濃は「やきもののまち」くらいは言えるかもしれないけど知ることによって、もっとこの地が好きになる。そういう本になってほしい。販売価格は3万円弱する本なので、簡単には買えないけれども、手に入れてもらいたい。図書館にも置いてもらえるように動いているので、一般の人は借りて読んでもらって、業界に関わる人は買ってもらって、みんなが手に取ってしっかり読み込んでもらいたいな。そうすることで地域愛というのが絶対高まると思うんだよね。
水野:本当にいろんな人に手に取ってほしいですよね。
笠井:セラミックバレー協議会というのは、セラミックと付くからと言って地場産業に関わる人たちの為だけというわけではない。この地に住んで生業をしている人たち、やきものに関係ない人であっても全ての人が内包されているというメッセージが込められているんですよ。例えば近所でイベントを行うときに行政に協賛してもらいにいくよね。だけど、協議会が予算をしっかり持てるようになれれば、費用を捻出していけるようになる。だから、多治見、土岐、瑞浪でそういったかたちが出来ていけば良いと思っています。集まってきたよそ者・若者が活躍できるフィールド作りをこれからしっかりしていきたい。その可能性がなければ僕らも動かないですよ。
―可能性を感じてらっしゃるということですね。
笠井:そう。自分はどっぷり美濃に67年間生活してきたけど、ここ5、6年で感じている。
水野:僕らがやっている「CCC」や「土から生える」も、僕らだけでは絶対できていないはずです。
笠井:ただ、業界の中で変化を恐れる人たちもいます。だから、変化する人たちは抑えつけられる。飛び出た杭は打たれるわけですよ。打たれるけど、飛び抜けた杭はもう打たれないんですよ。だからそこを目指すしかない。
―飛び抜けるしかない。ということですね。
笠井:僕は講演で「業界に未来はあるのか」というセンセーショナルなタイトルで話をするんだけど、タイル業界の未来は決して暗くない。重い大きな扉があるけど、その扉の向こうには輝かしい未来が待っている。みんなで力を合わせて重い大きな扉を押せば、明るい未来を手に入れられるんだ、と。だからこそ、この地を好きになり、勉強してしっかり産業を守りましょうと話している。これからの日本は人口減少という状況にあって、V 字回復は厳しい。だけど、決して可能性はゼロではない。成功の反対は失敗じゃない。成功の反対は挑戦しないこと。チャレンジして失敗もするわけだけど、初めて成功も手に入る。だからチャレンジしなきゃいけない。でも、挑戦しない人がいっぱいいる。だから、若者たちにこれからチャレンジをどんどんしてもらいたい。一生懸命、力を合わせて押していけば明るい未来は手に入ると思っている。
―若い世代にも、地場産業に希望を感じてほしいですよね。
笠井:それと同時に、美濃焼の文化、技術の継承をみんなでしていく必要がある。本は、そのきっかけにもなる。意匠研究所に勉強しに来て、担っていきたいと思う人たちが増えてくれるといいなと思います 。
もっともっとよそ者の若者たちが集まって、生活しやすい環境作りを僕らがしていけるかなと思う。この本をきっかけにして、ますますセラミックバレー協議会を強くしていきたいですね。
〜後編ここまで〜
▼後編はこちらから▼
https://readyfor.jp/projects/ceramicvalley/announcements/374873
リターン
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