支援総額
目標金額 610,000円
- 支援者
- 61人
- 募集終了日
- 2015年11月27日
「風雪ながれ旅」北島三郎
毎週のように、被災地巡回は大変でしょう?とこの四年半ずっと周囲の人から心配されていますが、そんなことはありません。大好きな人と一緒の道中で、現地ではなるべく美味しいものを食べることを再優先しているので、全然苦になりません。災害直後はラーメン屋さんしか営業していないのが少々キツかったのですが、そもそもラーメンは大好きなので何とか我慢できました。
宮古市も大槌町も、他の三陸の町も、とにかく隠れた場所にある知られざる名店が多く存在するので、探す楽しみがずっと続いている状態です。割とハズレもありますが(失礼!)金星を見つけた時の喜びは何にも代えがたいです。美味しい、という基準よりも、面白い!と思う店の方が優先されます。これは個人の感想ですが。
そして個人の感想で言えば、宮古市のAという店を発見した時は本当に「やったぜ!」とガッツポーズしました。チャーシューが美味しいんです。宮古市のラーメンは魚の出汁が効いていて、醤油味のスープがあっさりと美味しいんです。
このAというラーメン屋にある日入ったら、すぐ近くの仮設住民の女性と鉢合わせしました。活動前に高齢の住民さんを談話室に案内してくれたり、会場の設営を担当してくれたりと、協力的な方でしたが、活動が始まる前にドロンといなくなったので不思議に思っていたのですが‥彼女からは何にも予告されたなかったので、いきなりでビックリしました。
「さっきはどうもー」
「ここで働いていたんですか?言ってくれればいいのに」
内緒にしたわけじゃないのよ、と彼女は言って、我々にラーメンを運んできてくれました。店はもともと別の場所にあったのですが、津波で被災して移転したそうです。老夫婦が切り盛りしているところに、彼女がパートで入っているとのことでした。
「おじいやんの様子、どうでした?」
トレイを両手に持ったまま、彼女に質問されました。おじいやんというのは、毎回活動に顔を出してくれる80代の男性なのですが、回を重ねるごとにちょっとずつ反応が悪くなってきて、ぼーっとしている瞬間が増えてきたので皆で気になっていました。
「今日もいつものリクエストをくれました、くれたと言うか‥半分、こっちがお鉢を向けたんですけどね。北島三郎が好きでしたよね?何の曲が得意でしたっけ?みたいに誘導尋問した感じです」
「で、歌ったのね。風雪ながれ旅」
おじいやんと呼ばれる男性は、初回の活動で元気にこの曲をリクエストして、大きな声で歌ってくれていたのですが、一年、二年と仮設生活が続くうちに様子がどんどん変わってしまいました。今ではすっかり、歩行もおぼつかなくなり、誰かが自室まで迎えに行かないと談話室までたどりつけなくなるほどでした。
「包括支援センターとかに連絡入れたほうがいいのかなあ」
会計の時に女性が言いました。
「知っている保健師さんがいるので、私から連絡入れておきますよ」
そう請け負って、私は知り合いの保健師さんに現在の彼の様子や、周囲の環境などについて報告し、一度は訪問して欲しい旨を書きました。翌日には返事が来て、さっそく行政として動いてくれると知らされ、安堵したものです。
その後、彼の状態はゆっくりと、しかし確実に“何らかの傾向に”進行しているように見えました。行政の介入があったのかどうかは確認していませんが、デイサービスなどの利用はあるようでしたが、仮設の部屋で奥さんと二人暮らしのまま、時はどんどん過ぎて行きました。入居の話や転居の予定などは無いらしい‥と、ラーメン屋の方からもうかがいました。
雨の降る日、その仮設での活動を開始する時間帯に彼とゆっくり話をする機会がありました。私は音楽療法とは関係のない世間話をとっかかりに、彼に昔話を聞かせて欲しいと問いかけてみました。
「かなり長い間、北海道にいらしたそうですね」
すると彼は、虚ろに空を見据えながら、何かを思い出したように口を開きました。
「30年くらい、旭川にいたよ。中華料理の店を持っていた。その前は‥どうだったかな」
隣りにいた別の中年女性が、それを聞いて
「あらやだ、私も北海道に三年いたのよ。アイヌの人と一緒に仕事してたわ」
彼女の発言をきっかけに、他の参加者数名からも北海道の居住経験の話が出ました。この仮設住民の北海道率は高いな、とみんなで盛り上がりました。聞けば、三陸沿岸から北海道に出稼ぎに行く人はかなり多かったようです。
再び彼に向き合い
「前にリクエストしてくれた、風雪ながれ旅も北海道の思い出が懐かしいから、だったんでしょうかねえ」
と掘り下げてみました。何かもっと記憶を蘇らせてくれるかな、と期待したのですが、残念ながらその日の彼はあまりスイッチが入らない状態のようでした。
一時間の活動を終えて、雨上がりの中庭に全員で出てみることになりました。軒下に我々が連れてきた雑種犬のタンタン(野良犬だったのを保健所が保護して、もらいうけた犬です)がいたので、車に乗せようとリードに手をかけたその時、彼が
「犬だ、犬がいる。可愛いなあ、自分も十代の頃に奉公先の魚屋で犬と一緒に寝ていたんだよ。布団に入れて可愛がってたんだ」
と饒舌に話し、満面の笑みを浮かべてタンタンを抱き寄せて強く撫で始めました。その場にいた我々と住民の皆さんは、お互い顔を見合わせて彼の豹変ぶりに驚きました。そうか、音楽でも回想法でもダメな時は、犬という手があったのか‥というのは語弊がありますが、タンタンという存在に助けられたエピソードです。
活動終了後、Aに立ち寄ってパートの女性に報告をしました。ご褒美にシャーチューあげようか?と言われましたが、塩分が心配なんでやめときます‥と答えました。タンタンにはかわりに犬用のおやつをあげました。ありがとう、タンタン。
リターン
3,000円

①お礼状(ポストカード)
- 申込数
- 34
- 在庫数
- 制限なし
- 発送完了予定月
- 2016年2月
10,000円

①お礼状(ポストカード)
②写真集1冊
③当法人ホームページへお名前の記載
(掲載を希望されない場合はご連絡下さい)
- 申込数
- 20
- 在庫数
- 制限なし
- 発送完了予定月
- 2016年2月
3,000円

①お礼状(ポストカード)
- 申込数
- 34
- 在庫数
- 制限なし
- 発送完了予定月
- 2016年2月
10,000円

①お礼状(ポストカード)
②写真集1冊
③当法人ホームページへお名前の記載
(掲載を希望されない場合はご連絡下さい)
- 申込数
- 20
- 在庫数
- 制限なし
- 発送完了予定月
- 2016年2月

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