日本看護歴史学会で講演の機会をいただきました

8月11日（金・祝）に神奈川県小田原市にある国際医療福祉大学小田原保健医療学部 本校舎で開催された第37回日本看護歴史学会学術集会で講演の機会をいただきました。

日本看護歴史学会は1987年に広く看護の歴史を探究すること、そのための人的、知的交流を図ることを目的として設立された学会です。

日本看護歴史学会
http://jsnh.jp/

私は「戦争と看護」という分科会で花田ミキさんの日中戦争、太平洋戦争の際の3度に及ぶ召集、そこでの経験について話をしました。また花田ミキさんが生涯かけて訴えかけてきた「命を阻むものはすべて悪」という未来に向けた警告、メッセージについて触れました。

私の後に日本赤十字看護大学大学院の川原由佳里教授の「看護と戦争：歴史研究にできること」と題した講演の内容にとても考えさせられました。

戦争の足跡が近づくと、それに合わせて少しずつ法律が改正されること。

ジュネーブ条約にある「敵味方の区別を行わずに治療を行い、捕虜を保護する」ことを無視し、日本の軍は「生きて虜囚（りょしゅう）の辱め（はずかしめ）を受けず」という戦陣訓のもと、敵がきたら自決をすることを重視しました。ジュネーブ条約を順守していたら、失われなくてもよい命がどれだけあったのでしょう。

花田ミキさんの映画の仕事をしていたら、日本の従軍看護婦ばかりに目が行っていました。しかし川原先生の発表の中にあった、イギリスやオーストラリアの看護婦が日本軍の捕虜となり、性的暴行を受けて処刑されていった記録があるそうです。これはジュネーブ条約の検証時に、生存した看護師が証言して明るみになった事実でした。川原先生が「証言台に乗らなかったが、おぞましい経験をした看護師はどれだけいたか」という言葉が重かったです。

また、イギリスのメディアBBCとオーストラリアのAustralian Broadcasting Corporation （ABC）が1980年代に日本兵の捕虜となったイギリス人、オーストラリア人、オランダ人看護師の収容所での劣悪な生活が連続ドラマとなり公開されました。1981から1985年までの4年間に第1シリーズから4シリーズまで公開されました。

2人のセッション終了後、川原先生にこのドラマが4年にもわたりつくられたことについて聞くと「それだけ、恨みが深いということでしょうね」と返してくれました。

Tenko（BBC）
https://www.bbc.co.uk/programmes/p00tmfrn

さて改めて、今回の学会の紹介ページを見ると

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理事会セッションIで「戦争と看護」を取り上げようと決めたのは京都大会（2013年）からで今年は11回目となるが、あらゆる面で人間の尊厳を奪い尽くす戦争の不条理さを、史実を通して正しく認識する上で貴重なセッションが続いてきた。

だが、今年は、少々様相を異にする。国会の場で飛び交う軍事用語のすさまじさは、70数年前に世界に向かって誓った非戦平和の国とは到底思えず、前述の句と共通の「新たな戦前」の空気感が漂っている。そこで、今年は　「戦争は過去のものではない」のテーマのもとで（以下略）
http://jsnh.jp/kaihou/kaihou80.pdf
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と書かれていました。川原先生の講演を聞いて、昔話には全く聞こえなかったことに、背筋が凍る思いでした。

また映画「じょっぱり-看護の人花田ミキ」は戦中の花田ミキだけを描くのではなく、現代と過去を行きつ戻りつしながらストーリーが進んでいく予定です。

このメルマガが出る8月14日（月）は終戦日の1日前ですね。人は過去から何を学ぶかが問われる時代です。経験はしていなくても、歴史にふれ想像を働かすことはできるはずです。

そのうえで「命を阻むものはすべて悪」という花田ミキの言葉の意義を振り返っていただきたいです。

小田原市はとても良い天気でした。

会場となった国際医療福祉大学のキャンパスです。

久しぶりのリアル開催とのことで全国から多くの方が参加されていました。

当時の制服などが展示されていました。